RECORD

Eno.350 竜胆 棗の記録

一人

誰かにここまで真っ直ぐ物を言ったのは初めてだと思う。

誰かに初めて力になりたいと思ったのも初めてだ。

誰かと一緒に何かを成し遂げたことも初めてだ。

そして誰かにこんなに褒められたことも。

初めてばかりの毎日で、退屈しないで済んでいる。
誰かと一緒に居て楽しい気持ちも、誰かが困っていたら寄り添いたくなる気持ちも、誰かに心配される気持ちも、誰かを好きになる気持ちも俺は知らない。
そんなものは必要ないと思っていたから、他人は信用しない、どうせ皆俺の事なんて見ちゃいない、俺の事を気にする人間なんて居ないと思っ
てた。

だからこの気持ち達のことを俺は知らない。

いや……違う





俺はこれを知っているけど目を逸らしているだけだ、アイツにはあんな事を言ったのに俺は皆を見れないでいる。

見ようとしてないのは俺の方もなんだろうな。

俺は……怖いんだろう、皆に俺がどういうやつか知られるのが、俺が皆を守れずに死なせてしまうのが。

ただただ怖いんだ、居場所なんて作りたくない大切な人も作りたくない、失う怖さを置いていかれる怖さを知っているから。

そんなものは俺にはいらないんだ。

俺は1人で生きていける……これまでだってそうしてきたんだから。