RECORD

Eno.167 喜田心春の記録

魔法にかかった日

中学二年生の、部活の帰り道。
私の目の前で派手に転んで怪我をした小学生の子がいた。
すぐに駆け寄って、持っていた絆創膏で手当てをしてあげた。
それでも、その子はまだ痛むのか、瞳に涙をいっぱいためていた。

だから、私はおまじないをかけてあげたんだ。

「いたいのいたいのとんでけ」



そう言って、絆創膏の上をそっと撫で、痛みをどこかへ払うように手を振った。
こんなおまじない、子供だましにしかならない。そう思っていた。


けど、その時おまじないは本物になった。


近くを通りかかったお爺さんが、突然膝を痛そうに抑えその場にしゃがみ込んだ。
そして目の前の小学生の子は、

「痛くなくなった!なんで?!」



と目を丸くして驚いていた。



私だって、その時は目を丸くして驚いていただろう。
自分だってわからない事が突然起きたのだから。

その子がどんな顔だったとか、お爺さんの痛そうな顔とか、
もう覚えていない事は多いけれど、この言葉だけは覚えてる。


「お姉さん、魔法使いみたいだね!!」









これが、私の最初の魔法

そして、私が使える唯一の魔法になった。