RECORD
Eno.7 瀬波 りり子の記録
裏世界の空を何度か飛んでみて、ひとつ思ったことがある。
この世界では、私は、境目の空のなかでしか、飛ぶことができないのだな、と。
私が飛ぶのは神秘によって。
もたらされる結果は物理法則にほぼ完全に則っているとしても、
その実現を支えているのは私の操る神秘があるから。
ならば、表世界でそうあることは許されない。
裏世界ではそうではなく、私は神秘を操れる。
無闇矢鱈に使うことは好まれないだろうが、
あくまで移動に使うぶんには問題はないだろう。
この身を動かすこの世ならざる力と、何の区別もできたものではない。
裏世界には朝焼けか夕焼けしかない。
青い空、黒い空、白い空……
そのどれもは、訪れ得ぬまま存在しないもの。
別に。
青に包まれて飛ぶことに、
黒を引き裂いて飛ぶこと、
白に隠されて飛ぶことにも、
どれにも強い思い入れがあるわけじゃない。
だけど私はその感覚を知っていて、"この私"はそれを思い出すだけしかできない。
知りながら二度と手の届かないものを惜しんでいる……
というほどではないけれど。
世の中には知らないことが多いのと同時に、
知っているのに二度と確かめ得ないものも多くて。
それは寂しい……でいいのかな?
惜しい? 悲しい? ……心細い?
言葉にはまとまらないけど。
私は、これについて何かを思っているみたいだ。
あ。
いや、いや……いや、違う、そう、違う。
違うに決まっている。違うことは、違わない。間違いない。
だって、私はまだ何も知らない。
裏世界に赤い空しかない理由を知っているか?
裏世界がある理由を知っているか?
なぜあちらが裏なのかを知っているか?
この表裏の世界がなんという名前をしているのか、知っているのか?
どれだって知らない。理由が、名前があるのかどうかさえも。
"この私"が青い空をまた飛べるかどうかなんて、わかるわけもない。
なんだったら、きっと……私以外の誰にだって。
それが神秘で、それが裏世界なんだろうと思う。
私はちょっと裏世界を歩いて、
ちょっと裏世界で戦って、
ちょっと友達を心配する側に立っていて。
それだけなのに、きっと知った気になっていた部分があったんだろうな。
私なんか、ただの裏世界初心者に過ぎないのに。
私は何についてなら初心者ではないのだろう。
赤い空、青い空、黒い空、白い空
裏世界の空を何度か飛んでみて、ひとつ思ったことがある。
この世界では、私は、境目の空のなかでしか、飛ぶことができないのだな、と。
私が飛ぶのは神秘によって。
もたらされる結果は物理法則にほぼ完全に則っているとしても、
その実現を支えているのは私の操る神秘があるから。
ならば、表世界でそうあることは許されない。
裏世界ではそうではなく、私は神秘を操れる。
無闇矢鱈に使うことは好まれないだろうが、
あくまで移動に使うぶんには問題はないだろう。
この身を動かすこの世ならざる力と、何の区別もできたものではない。
裏世界には朝焼けか夕焼けしかない。
青い空、黒い空、白い空……
そのどれもは、訪れ得ぬまま存在しないもの。
別に。
青に包まれて飛ぶことに、
黒を引き裂いて飛ぶこと、
白に隠されて飛ぶことにも、
どれにも強い思い入れがあるわけじゃない。
だけど私はその感覚を知っていて、"この私"はそれを思い出すだけしかできない。
知りながら二度と手の届かないものを惜しんでいる……
というほどではないけれど。
世の中には知らないことが多いのと同時に、
知っているのに二度と確かめ得ないものも多くて。
それは寂しい……でいいのかな?
惜しい? 悲しい? ……心細い?
言葉にはまとまらないけど。
私は、これについて何かを思っているみたいだ。
あ。
いや、いや……いや、違う、そう、違う。
違うに決まっている。違うことは、違わない。間違いない。
だって、私はまだ何も知らない。
裏世界に赤い空しかない理由を知っているか?
裏世界がある理由を知っているか?
なぜあちらが裏なのかを知っているか?
この表裏の世界がなんという名前をしているのか、知っているのか?
どれだって知らない。理由が、名前があるのかどうかさえも。
"この私"が青い空をまた飛べるかどうかなんて、わかるわけもない。
なんだったら、きっと……私以外の誰にだって。
それが神秘で、それが裏世界なんだろうと思う。
私はちょっと裏世界を歩いて、
ちょっと裏世界で戦って、
ちょっと友達を心配する側に立っていて。
それだけなのに、きっと知った気になっていた部分があったんだろうな。
私なんか、ただの裏世界初心者に過ぎないのに。
私は何についてなら初心者ではないのだろう。