RECORD

Eno.307 倉橋ゆづるの記録

無題

主語やスケールの大きい話は好みじゃない。

本屋に入ると目につく煽り文句の数々。
その中に『人間讃歌』という文字を見つけて口角が上がる。

人間中心主義の間違いだろう。
いや、人間という存在を賛美するなら、
確かにそれは間違いなく『讃歌』なのだろうが。


人間血族』。

にんげんお母様

——ニンゲンお父様


あまりに不寛容で、他者を踏み躙ることを命題としたいきもの。
それゆえに罪なきもの・・・・・
その矩を超えること、命数を善悪で量ることは、許されていない。

その人間が唯一手を伸ばし、掴むことができるものがあった。
選び、意志を継ぐこと――本来はそれを讃えた言葉だったはずだ。

しかし今やそれは、人間という種そのものの価値を示し、
その壮大なラベルを無批判に肯定するだけのものに成り下がった。
仮定と推測を幾重にも重ねた上で完成する規範をありがたがっている。


とはいえ、ぼくだって・・・・・それを糾弾する立場にはない。
命題に忠実で蒙昧な臓腑の下には、
意気地なしの心臓が拍動しているのだから。

  ぼくが愚かであれば  兄は救われる。

……ただ、それだけを信仰していた。