RECORD
Eno.305 神楽 紗耶の記録

むかしむかし、あるところに。
細々と神を祀っている神社がありました。

そこにはとてもきれいな鈴蘭の花が咲いておりました。
鈴蘭の花は巫女や参拝者たちの心を癒し、とても大切にされておりました。

その中でも、一人の巫女の少女はたいそう鈴蘭を気に入っておりました。
毎朝水をあげ、香りをかぎ、美しいその姿を眺め続けていました。
あるとき、巫女は鈴蘭を一輪刈り取って部屋に飾ることにしました。
誰にも言わずこっそりと行ったことでしたが、たっだ一輪を取ったとて誰も咎めません。

その鈴蘭は巫女の部屋にたいそう大事に飾られました。
枯れないように水を替えて、日に当てて。
神社の誰もが、そんな姿を微笑ましく見守っておりました。
そうして一週間が経ったある日

鈴蘭の前で巫女は死にました。
それから、神社の人々は次々と体調を崩し、死ぬものも多くありました。

人々はこれを鈴蘭の祟りだと考え、恐れました。
実際はそんなことはありません。巫女が鈴蘭のかけらを口に含んだとか、刈り取る時に持ち出した包丁でそのまま料理をしたとか。
現代科学の知識があればわかることでした。しかし、その時代にそんなことはわかりません。

人々は神社を去り、小さな祠を建てて鈴蘭を祀りました。
鈴蘭の祟りが鎮まるようにと何度も祈りました。
当然、それ以降人が死ぬことはなくなりました。
ただの事故。自然がもたらした毒は人々の信仰によって神秘を得ました。
祠に祀られている鈴蘭。自分を傷つけた人間を呪い殺す毒を持つ怨霊。
事実はどうあれ、人の畏れに寄って"それ"は生まれました。
ですが、この地に根差した鈴蘭は祠から動くことも、喋ることもできません。
ただ季節が過ぎるのを見て、人々の移り行きを見て、神秘が解明されていく頃には誰もここで起きた事故のことは覚えていませんでした。
そのままいつの間にか裏世界に押し込められた"それ"は、変わらずそこにありました。
そのままうすぼんやりと消えていくさだめを受け入れていたのです。
ですが、あるとき。

"それ"と出会った少女が全てを変えたのです。
むかしばなし そのいち

むかしむかし、あるところに。
細々と神を祀っている神社がありました。

そこにはとてもきれいな鈴蘭の花が咲いておりました。
鈴蘭の花は巫女や参拝者たちの心を癒し、とても大切にされておりました。

その中でも、一人の巫女の少女はたいそう鈴蘭を気に入っておりました。
毎朝水をあげ、香りをかぎ、美しいその姿を眺め続けていました。
あるとき、巫女は鈴蘭を一輪刈り取って部屋に飾ることにしました。
誰にも言わずこっそりと行ったことでしたが、たっだ一輪を取ったとて誰も咎めません。

その鈴蘭は巫女の部屋にたいそう大事に飾られました。
枯れないように水を替えて、日に当てて。
神社の誰もが、そんな姿を微笑ましく見守っておりました。
そうして一週間が経ったある日

鈴蘭の前で巫女は死にました。
それから、神社の人々は次々と体調を崩し、死ぬものも多くありました。

人々はこれを鈴蘭の祟りだと考え、恐れました。
実際はそんなことはありません。巫女が鈴蘭のかけらを口に含んだとか、刈り取る時に持ち出した包丁でそのまま料理をしたとか。
現代科学の知識があればわかることでした。しかし、その時代にそんなことはわかりません。

人々は神社を去り、小さな祠を建てて鈴蘭を祀りました。
鈴蘭の祟りが鎮まるようにと何度も祈りました。
当然、それ以降人が死ぬことはなくなりました。
ただの事故。自然がもたらした毒は人々の信仰によって神秘を得ました。
祠に祀られている鈴蘭。自分を傷つけた人間を呪い殺す毒を持つ怨霊。
事実はどうあれ、人の畏れに寄って"それ"は生まれました。
ですが、この地に根差した鈴蘭は祠から動くことも、喋ることもできません。
ただ季節が過ぎるのを見て、人々の移り行きを見て、神秘が解明されていく頃には誰もここで起きた事故のことは覚えていませんでした。
そのままいつの間にか裏世界に押し込められた"それ"は、変わらずそこにありました。
そのままうすぼんやりと消えていくさだめを受け入れていたのです。
ですが、あるとき。

"それ"と出会った少女が全てを変えたのです。