RECORD

Eno.1095 千花 律太の記録

話5

一度だけ、告白されたことがある。

中等部に上がったばかりの頃、女の子からの手紙が机の中に入っていたことがあった。
相手はあまり話したことのない子だった。
今思い返せば、おそらくは俺の容姿に対する多少の物珍しさから興味を抱かれたのかもしれない。

ただ、その時の俺は、手の中にある手紙をまるで突きつけられた刃物のように感じていた。

呼び出された場所に咲いていた花の香りも、彼女がどんな言葉で自分に好意を伝えたのかも、既に覚えていない。
自分がどんな返答を返したのかすら。
すべてが何も変わらないようにするのに必死だったことだけを覚えている。

それから俺が話し終えた時、彼女は静かに涙を流していた。
何を言っても間違えることは分かっていた。
分かっていたから、間違いの中で比較的一番マシな間違いを選んだ結果だった。

以降、その子と話すことは無くなったし、
高等部に上がってからは相手が転校したことでもう顔を合わせることもなくなった。