RECORD
Eno.477 三咲 湊の記録
誕生日
――2025年5月5日、西部学生寮棟の自室にて。
誕生日を迎えたので自分へのプレゼントを買った。コーヒーと少し値の張るチョコレート、そして2000円のオカルトのムック本。
薄暗い部屋の中、テーブルランプの明かりを頼りに本をめくっていく(僕はこの形が一番読書に集中できる)。どこかで聞いた都市伝説、妖怪、果てはインターネットの創作話。馬鹿らしいと一蹴するのは容易い。でも、そんな話の数々に目を通しながら、僕は思いを馳せる。とても魅力的で心惹かれる、神秘的なそれらについて。もしこの本の内容の一部だけでも本物が存在するとしたら、どんなに素敵なことだろうか。
再び本をめくっていく。幼い頃にひと目見て、それ以来脳裏に焼き付いた不思議な存在を思い出す。

アハハなんて笑って、窓を見た。まだ昼間だというのに、空は分厚い雲に覆われている。窓ガラスにポツリ、と雨粒がひとつ。

雨の到来をきっかけに、今日の予定を思い出す。今日は講義の前に古本屋に行こうと思っていたんだった。大学から少し離れた場所にあるから、早めに寮を出ないといけない。

本に記録された、嘘か真かもわからぬ存在への名残惜しさを口にして、ぬるくなったコーヒーを飲み干した。カメラバッグを手に取り、扉へと向かう。
――これは、僕が裏世界へ迷い込む数時間前の出来事だ。
誕生日を迎えたので自分へのプレゼントを買った。コーヒーと少し値の張るチョコレート、そして2000円のオカルトのムック本。
薄暗い部屋の中、テーブルランプの明かりを頼りに本をめくっていく(僕はこの形が一番読書に集中できる)。どこかで聞いた都市伝説、妖怪、果てはインターネットの創作話。馬鹿らしいと一蹴するのは容易い。でも、そんな話の数々に目を通しながら、僕は思いを馳せる。とても魅力的で心惹かれる、神秘的なそれらについて。もしこの本の内容の一部だけでも本物が存在するとしたら、どんなに素敵なことだろうか。
再び本をめくっていく。幼い頃にひと目見て、それ以来脳裏に焼き付いた不思議な存在を思い出す。

「せっかくの誕生日なんだ。誰か、この中のひとつにでもいいから出会わせてくれないかな」
アハハなんて笑って、窓を見た。まだ昼間だというのに、空は分厚い雲に覆われている。窓ガラスにポツリ、と雨粒がひとつ。

「……あっ!」
雨の到来をきっかけに、今日の予定を思い出す。今日は講義の前に古本屋に行こうと思っていたんだった。大学から少し離れた場所にあるから、早めに寮を出ないといけない。

「せっかくの誕生日なのに早速ついてないな。せめて、都市伝説のひとつにでも出会わなきゃ割に合わないって!」
本に記録された、嘘か真かもわからぬ存在への名残惜しさを口にして、ぬるくなったコーヒーを飲み干した。カメラバッグを手に取り、扉へと向かう。
――これは、僕が裏世界へ迷い込む数時間前の出来事だ。