RECORD

Eno.276 秦 秋葉の記録

秦秋葉カルテ:無意識化のストレスや痛みについて

では、と月数回カウンセリングに向かう。
ワタシはこの世界の人間ではないから経過観察と監視の対象なんだって。
まぁ、行くたびに顔見知りの人もできるし話をするのが楽しいからなんだっていいのだけど。
そんなことを思って、カウンセリング室の椅子に座って
持ち込んだお菓子を食べながら先生の結果を待つ。

先生は此方を見て軽く笑うとこちらに話しかけてくる。
言われる事は大体同じ、健康状態は良好か。周りの環境はどうだ。
神秘の状況は変わりないか。……異世界へ、転移してしまう兆候はないか。とかなんとか。

大体いつも、何もない。とか何でもないと答える。
いつも通りのヒビだし、何でもない。……飛んでしまう兆候がわかるというのなら
さっさと教えてほしいものだけれど。何時までこの世界にいれるか、早く知りたい。





では、秦さん。大体お聞きしたい事は終わりました。いつもお疲れ様です。



優しい声で先生がそう言ってくれるから、元気よく挨拶をする。
手を挙げてそういえば、先生も軽く手を振ってこたえてくれる。

いつも通りなら良かった。……最近、本当に疲れたとか眠い。とかないですか?食事量が増えた…とか何でもいいですけれど。



眠い時は、この間あった。食事をとらなくてもイイカナ…とか。
結果食欲は特に変わってなくて、ただ何もしたくないなーなんて思って時間を過ごした程度。
そういうと、先生の眉が寄る。何か変な事をいってしまったか。そう問いかけると先生は軽く首を横に振る。


「前にも言いましたが、秦さん。貴方はストレスをストレスと感じられない体質です。」
「正しくは、ストレスを感じていると認識できていない。だからあまり怒りもわかない。」



そんな状態です。と確認の様に言われた。
そう、それは前に言われて知っている。ワタシの体はストレスを無視している…らしい
でも、ストレスを感じないわけじゃなくて、あくまで”ストレスを感じていない様に思っている”だけ…とかなんとか。
…だから、体に予兆が出たら気を付けた方がいい…とか。
いや、でもそういわれたって何もわからないし。ワタシ。別に何もないしなぁ…と頭をかく
先生は、それを見てから念を押すようにもういちど


「良いですか。まだ平気かもしれませんが。
感じないから痛くない訳ではありません。痛いと感じなくても着実に貴方には傷ができている…そんな状態ですからね。何かあれば、直ぐに言ってください。」



はぁい、と再度気の抜けた声で返事を一つする。
本当に感じていないのだから、全然大丈夫なのになぁ…なんて言いながら部屋を出て帰る。

セメスケやアキラ、ケンゴと遊びに行ったりこの後から忙しくなるのだ。
…祭、は雪見がアイツと行くから誘うのはやめておこうかな。
……。ま!いっか。皆楽しんでお土産とかくれないかなぁ!


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カウンセリング室から、彼女が立ち去った後。
カウンセラーの職員は小さく息を吐いた。
身体は…まだ元気そうだが、ストレスによる寝不足や軽い不眠の症状がみられる。
特に孤独を嫌う兆候が激しい。ストレスが寄り掛かる性格かもしれない。
…とはいえ、ストレスや怒りを感じられない…という事で認識からの負担は軽減されているかもしれないが、内側が心配だ。

本人は、特段希死念慮も自殺願望もある訳ではないのが今のところの救いか。

「はあ…。よくよく目を配らないと」



カウンセリング室の椅子に深く腰掛けて。
カウンセラーはすっかり冷めたコーヒーに口を付けた