RECORD

Eno.95 黒江の記録

2_二年前の夏

 ボクは大事な人を二人失った
 一人目は十年前、怪奇に殺された
 二人目は二年前――――

「黒江くん、見て! 私もスマホ買ったの。連絡先教えてくれる?」


 ボクには仲の良い友達がいた

「そういやそういう約束だったね。いいよ、静空ちゃんのコード見せて」


「へぇ、そうやって交換できるんだ。すごいな~」


 静空は魔術を扱う神秘使いだった
 なんでそんな事知ってるかって? ばったり裏世界で会って仲良くなったから
 後から彼女は同じ学校の女子クラスにいる事を知って、学校でも話す事が増えていた

 信じがたい話だが、こいつは裏世界経由でここへ来た「異世界人」らしい
 静空の世界では神秘が秘匿されずに科学と共存しているらしく、科学と魔力の融合した術を「魔術」と呼んでいたりしていた
 あちらの世界で静空はエリートだったみたいだが、家族がもっと優秀だったとかで拗ねて家を出たそうだ
 ボクも九年くらいは■と比べられてたから親近感のようなものが芽生えていた

「……こっちの世界の海って人が遊べるんだ」


「そりゃそうでしょ。静空ちゃんの故郷は遊べなかったの?」


「うん。怪奇がうじゃうじゃいるし、
 季節の変わり目にはでっかいイカの怪奇が大暴れするから……」


「とんでもねぇ海だね。じゃあ、今度一緒に海見に行かない?」


「なにそれ。デートみたい」


 静空はくすりと笑い、そうして次の休日は海へ行く事が決まった



「楽しみだなぁ、海!」


 横断歩道の待ち時間、車の往来を見ていたら見覚えのある黒い女がいた気がした

「……?」


「黒江くん、どうしたの?」


「いや、なんでもない……」


 その時は気のせいだと思った。思いたかった

「青になったよ。行こう」


「やった! もうすぐ海だ~」


 二人で歩道を渡った時、背後からあの声が聞こえた

『最近会いに来ないと思ったら、お友達が出来たんですね』

「え、」


 振り向いたらそこには口を塞がれもがく静空がいた

 人通りの少ない通りだった。コンクリートの下は裏と繋がっていた

 助けようとした頃には完全に沈み込んでて

『あなただけ幸せになるのは許せないもの』

 そう嘲笑う怪奇の声と


 地面と混ざり、中途半端に残った紫の髪飾りがあった