RECORD

Eno.95 黒江の記録

4_それから、

 静空が死んでから約一年半が経った
 今日も俺は帰る前に裏世界で怪奇を殺す
 最初は嫌々やってたが、怪奇なら殺し放題だと気付いてからは苦じゃなくなった

 静空の武器も、異能も、使える物は全部使った。異能も九年したら馴染んできた
 怪奇の悲鳴も次第に心地良くなって来た
 これだけが俺であると肯定してくれるようだった


 あの時までは


「黒江くん、久しぶり──」


「って、どうしたの!? 私! 静空だよ!?」


「うるさいうるさいうるさい! お前なんかに静空を真似されてたまるか!!」


 また静空を真似した怪奇か

 その当時は人の記憶を覗く悪趣味な怪奇が多く裏世界に紛れていた
 俺は機傘を静空の姿をしたそいつに向けるが、そいつは驚きながら何度も避ける

「待って待って! 手紙残して勝手にいなくなった事そんなに怒ってる!?
 それとも、スマホ水没して連絡取れなかったの根に持ってる!?」


「静空はもういないんだ! これ以上静空をバカにするなら──」



「……適当吹き込まれたな?」


 そんなため息が聞こえたと思ったら、黒曜石の振り子が顔を掠めた

「前と全然服とか違うだろうが! わかれよ!!」


 見た事無い武器に気を取られてる間に、俺は武器を奪われて押し倒されていた


「ほんとに、静空なの……? 俺の夢でもなくて、ほんとに?」


「はぁ……やっと見てくれた」


 目の前の静空は俺と同じくらい時が進んでて
 アメトリンにも似た紫と金の瞳で俺を見つめていた

「大丈夫。私はここに生きている。
 夢なんかじゃなく、ただ一人の"如月キサラギ 静空シズク"として」