RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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八千代
「や~~~マジで助かったわぁ! さっすが誠はん!
 わざわざ関東からありがとぉな~」



「本当ですよ。クロの足でも結構かかるんですからねあの距離」


クロ
『とはいえ、ショートカットを知っているし、
 『送る』力を使えば新幹線を使うよりもずっと早いんだよなあ』


八千代
「せやから頼んどるんやん! ごっつ助かっとるんよ~
 お陰で妖怪の町の『ワケあり』の奴ら用のアパートもええ感じになったわ。
 皆も感謝しとったで」



「そういう話じゃなくって……
 まあ、対価たりえるものは貰ったので、ひとまずはそれで」


八千代
いやほんまごめんな!? まさかそっちがお祭りシーズンや思とらんで!
 夏祭りはうちんとこも隣町ももうちょい先やし、そっちはごっつ早いよなぁ」



「……そっちって、またやるんですか?
 河童が尻子玉投げる狂ったイベント


八千代
「なんやったら河童の脳みそが見える滑り台が最近できたで」


クロ
「……!?!?」




八千代
「せや、ま……じゃなかった。クロはん。
 こいつはまだこのどっちつかずの状態でええんか?」


クロ
『本人の希望を蔑ろにはできないからな。
 儂は小僧がそう在りたい未来を支えるだけだ』


クロ
『フラグメントの回収も自由。無理強いはしない。
 相変わらずこっちでは殺戮大好き人間だけどな』


八千代
そうしたんあんたやろがい。いや、責めとるんやなくってやな」


クロ
『……儂は、誠が。裏世界の方が生きやすいと思った』


クロ
『そして求められて、それに応えてやりたかった。
 それだけだったのだがな』



「クロ、俺はお前を責める気あらへんし、こうなったんも後悔しとらへんよ」



「ただ、裏世界にずっと住むんは……
 俺がまだ、そうなりたいって思えへんだけ」



「表世界に執着する理由があるんとちゃう。
 裏世界に執着することを否定する理由があんねん」


八千代
「ええでぇ、裏世界を『真』にすんの。
 特に誠はんの境遇やったら表はしんどいやろ」


八千代
「といっても、うちの時代と事情もあれもこれもなぁんもちゃうしな~
 『どっちつかず』が辛ぁないんやったらええんとちゃうか?」



「ありがとうございます、八千代さん。俺に気を遣ってくれて」



「いいんです。半端者で。
 今の暮らしが苦しいとか辛いとかはありませんし……」



「俺は明日も、俺が俺であることを祈って生きていく」



「……それだけの話なんです」







八千代
「……相変わらず少年はあれそれを考えるなぁ。
 裏世界に来たら、その生き辛い部分ぜぇんぶ忘れられんのに」


八千代
「優しくあろうとする執着も。裏に来たらいらんのになぁ」


クロ
『小僧にとっては、それが捨てられぬものなのだろう』


クロ
『儂のやることは、変わらずあやつを見守るだけのこと。
 送り犬としての、それから……もう一つの役割として』


クロ
『その道が、幸せな終わりであっても。破滅を迎えたとしても』


八千代
「……難儀よなぁ、今に始まったことやないけど」


八千代
「ま、なんや。うちはこうしてくれたことに恩義を感じとるから。
 そないに悩まんといてや」


クロ
『……送ることを失敗したというのに、八千代も大概変なやつだよな』


八千代
「そこはうちの問題やし。クロはんの責任とちゃうよ」


八千代
「……誠があんたと『契約』結んでからもうちょいで7年か。
 こっからどうなったか、関西で報告待っとるさかいな」