RECORD
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八千代
「や~~~マジで助かったわぁ! さっすが誠はん!
わざわざ関東からありがとぉな~」

誠
「本当ですよ。クロの足でも結構かかるんですからねあの距離」

クロ
『とはいえ、ショートカットを知っているし、
『送る』力を使えば新幹線を使うよりもずっと早いんだよなあ』

八千代
「せやから頼んどるんやん! ごっつ助かっとるんよ~
お陰で妖怪の町の『ワケあり』の奴ら用のアパートもええ感じになったわ。
皆も感謝しとったで」

誠
「そういう話じゃなくって……
まあ、対価たりえるものは貰ったので、ひとまずはそれで」

八千代
「いやほんまごめんな!? まさかそっちがお祭りシーズンや思とらんで!
夏祭りはうちんとこも隣町ももうちょい先やし、そっちはごっつ早いよなぁ」

誠
「……そっちって、またやるんですか?
河童が尻子玉投げる狂ったイベント」

八千代
「なんやったら河童の脳みそが見える滑り台が最近できたで」

クロ
「……!?!?」

八千代
「せや、ま……じゃなかった。クロはん。
こいつはまだこのどっちつかずの状態でええんか?」

クロ
『本人の希望を蔑ろにはできないからな。
儂は小僧がそう在りたい未来を支えるだけだ』

クロ
『フラグメントの回収も自由。無理強いはしない。
相変わらずこっちでは殺戮大好き人間だけどな』

八千代
「そうしたんあんたやろがい。いや、責めとるんやなくってやな」

クロ
『……儂は、誠が。裏世界の方が生きやすいと思った』

クロ
『そして求められて、それに応えてやりたかった。
それだけだったのだがな』

誠
「クロ、俺はお前を責める気あらへんし、こうなったんも後悔しとらへんよ」

誠
「ただ、裏世界にずっと住むんは……
俺がまだ、そうなりたいって思えへんだけ」

誠
「表世界に執着する理由があるんとちゃう。
裏世界に執着することを否定する理由があんねん」

八千代
「ええでぇ、裏世界を『真』にすんの。
特に誠はんの境遇やったら表はしんどいやろ」

八千代
「といっても、うちの時代と事情もあれもこれもなぁんもちゃうしな~
『どっちつかず』が辛ぁないんやったらええんとちゃうか?」

誠
「ありがとうございます、八千代さん。俺に気を遣ってくれて」

誠
「いいんです。半端者で。
今の暮らしが苦しいとか辛いとかはありませんし……」

誠
「俺は明日も、俺が俺であることを祈って生きていく」

誠
「……それだけの話なんです」

八千代
「……相変わらず少年はあれそれを考えるなぁ。
裏世界に来たら、その生き辛い部分ぜぇんぶ忘れられんのに」

八千代
「優しくあろうとする執着も。裏に来たらいらんのになぁ」

クロ
『小僧にとっては、それが捨てられぬものなのだろう』

クロ
『儂のやることは、変わらずあやつを見守るだけのこと。
送り犬としての、それから……もう一つの役割として』

クロ
『その道が、幸せな終わりであっても。破滅を迎えたとしても』

八千代
「……難儀よなぁ、今に始まったことやないけど」

八千代
「ま、なんや。うちはこうしてくれたことに恩義を感じとるから。
そないに悩まんといてや」

クロ
『……送ることを失敗したというのに、八千代も大概変なやつだよな』

八千代
「そこはうちの問題やし。クロはんの責任とちゃうよ」

八千代
「……誠があんたと『契約』結んでからもうちょいで7年か。
こっからどうなったか、関西で報告待っとるさかいな」