RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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怪異や神秘と戦う。
身体に痛みが走る。
いつもよりも簡単に身体が吹っ飛ぶ。

理由は簡単だ。
クロに防御姿勢でいるのではなく攻撃に転じるように指示した。
武器も改良してもらってより攻撃が通るようになった。
けれど、より命がけの戦法へと転じていった。

当てれば殺せるし当たれば死ぬ。
あぁ、っはは。やっぱり―― 楽しい。


痛みで生を実感する。
死のスリルを感じるのは生きているからだ。

もっとだ。
もっともっともっともっと。

俺にはこれしかないのだから!!

だから皆『俺』を否定してよ。





夜は約束した通り、皆とお祭りに行った。
いつも通りに皆が楽しむ姿を遠くから眺めていた。

いつもよりもにぎわう、特別な日。
あらゆる人間が、あらゆる関係性を持って縁日を楽しんでいる。
そういえば何が由来のお祭りなんだろう。
何か神様を祀っていたりするのかな。
ぼんやりと考えながら、喧噪を眺めていた。


境界線を引いた、外側で。
交わらず、変わらず、見ていた。
それで充分だった。本当に充分、幸せなんだよ。
そこに混じることができなくても。
遠くだと『手が下せない』から安心できる。
顔が見えないくらい遠くて、獲物のピントも定められないほどに雑多で。


あぁ、幸せだな、と。
眺めて、実感して、自分もそこにいるような気がして。
相棒が傍に居ないことが寂しくなって。
贅沢な楽しみ方だと、一人でほくそ笑んでいる。
ほんの少しだけの憧憬を抱いている。


……そんな人間だから。
アヤメからかき氷を差し出されたとき、受け取ることを拒否しようとした。
受け取ってしまえばせっかく引いた境界線が意味を成さなくなってしまう。
毎日ひたむきに隠しているそれが発露しないとは限らなくて。


最終的に、受け取りはした。
けれど、食べることができなかった。
多分これが京であればまだよかった。
あいつの場合無理やり押し付けられても、楽しいにはならないから。
けれど、けれどだ。アヤメから受け取って、祭りに参加したとなったなら。
俺はきっと、たまらなく嬉しくなってしまうと予想できて。
それが、どうしようもなく怖かった。




ふと、気が付く。

「あぁ、殺し以上の趣味が見いだせないのって。
 自分を殺してるからでもあるのか」


「―― 楽しいという感情は、
 狩りの衝動の快楽と似ているから」



それでも趣味が増えない理由の凡そは、狩り以上の快楽に至らないから、だろうけど。
退屈を感じるくらいが、きっと自分にはちょうどいいのだろう。
誰も、傷つけないために。