RECORD

Eno.279 葦原奏翔の記録

22:炎狼の境遇、決意【葦原奏翔】

炎狼と対峙した二人の内、零士と言うものから戦いの最中で識った炎狼の過去を聞いた
彼等はある世界にて平穏に暮らしていただけだった
それなのにある日、突如、化け物達によって壊された
防護服を着た者達も彼等を救わなかった
あまつさえ彼等の犠牲を、救われなかった事実すら無かったことにされたのだと言う

彼等は最早、生きていた人間ですらなく既に終わっていた無念や怒りの集合体のような存在という事だった
数多の生活、尊厳、人生を踏み躙られ無かったことにされた者達だった


それを聞いた俺は……腹を決めた
彼等をどうするべきかを
元々、彼等をどうするべきか決めあぐねていた
彼等の境遇や言動の真意を識らなかったから
識らなければ俺もどうするべきか理解らないから
けれどその過去を聞いた時ストンと腑に落ちたし、そういう事ならあの言動に、怒りに得心がいった
同時に今の彼奴等ならもしかして"あの曲"が使えるんじゃないかと
俺は"あの曲"を正直、使いたくはない
あれをしている間は止め処なく怒りや怨嗟といった感情を燃やし続けながら演奏する事になる…溜め込んでいる分で済めば良いが…もう一段階の方は、それはあまりに危険な曲だ
仲間を巻き込まないよう離れて貰う必要だってある
此れがそもそも正解かどうかすら俺には分からない
それでも
それを使うことにより1%でも可能性があるならば
救われなかった彼奴等に引導救済を渡してやりたいと思った
ああ、我儘で傲慢なエゴだろうさ
それでも只、斃されるだけという運命に行かせたくなかったし、『そうしたい』と思ったんだよ




【葦原奏翔】