RECORD

Eno.160 琉華院 いのりの記録

なつまつり

祭り囃子の音。活気ある屋台。行き交う人達。
人の海に流されながら、あたしはふわふわと彷徨っている。


「お祭り、楽しいねぇ~」

「花火は綺麗だし、皆楽しそうだし、とっても素敵!」

「……………ねぇ、ひーくん。あたし、今でもハッキリと覚えてるよ」





















あたしがまだすっごい小さい頃。
あたしは、お祭りの中にいたの。
人がいっぱいで、とっても楽しかったけど、いつのまにか、一緒にいた『おとなのひと』とはぐれちゃって。
とっても楽しいお祭りだったけど、ちょっと様子がおかしくて。
なんだかこわくて、心細くて、不安で泣きそうになったけど。







あそこで、あたしは出会ったの。
お祭りの中の金魚すくいの屋台で、あたしはひらひらと泳ぐ金魚と出会ったの。


「……………………。」




皆ひらひらで、ぷかぷかで、とっても綺麗。
けれど、その中でも一番惹かれた子。
あたしと金魚は、しばらくお互いを見つめ合った。
けれど、あたしはお金を持っていなかったから。お金はおとなのひとが持っていたから。
あの時、あたしはあの金魚をすくうことはできなかった。



「………………じゃあ、」

「おおきくなったら、ぼくとけっこんしてくれる?」



あたしはまだちっちゃかったから、結婚することはできないけど。
けれど、大きくなったらできるかも、って。

あたしは、軽い気持ちで、こくりと首を縦に振ったの。






────それから、何年も経って。
あたしが、16歳の誕生日の時。



「…………!」

「…………久しぶり。『あの時』以来だね。」

「あの時から随分とおっきくなったね。……ねぇ、覚えてるかな。いのり。







「ふなまつりって、やっぱり金魚すくいの屋台もあったのかなぁ」

「……でも、あたしが金魚すくいの屋台を見つけられなくってよかった」

「…………だって、あたしには屋台の金魚達をすくえないから」