RECORD
Eno.381 刀禰 明瑞の記録
ゆく河の流れは絶えずして
思い出すのはうららかな――と言っても春の日かどうかは定かではない。
日差しが暑くもなく、吹く風が寒くもない明瑞の幼きある日のこと。
そのときの明瑞は特に理由もなくただひたむきに教科書を読み、先生の話を聞き、板書をノートに書き写すことを好む児童だった。
だから、その日も国語の教科書を、日本の古典についての文章を一生懸命に読んでいた。
何とはなしにページを開き、目でなぞるのは明朝体の大きく強調された文字、方丈記の冒頭三行。
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これを読んだ瞬間、まるで目の見えない人が生まれて初めて水が流れるものだと知ったときのように、明瑞の頭の中に明確なビジョンが浮かび上がってきた。
川に突き刺さり、流れゆく水を絶え間なく裂く一振りの刀。
先生の声も意識の外、明瑞は呆然と文章を見つめ頭の中に描かれた映像を何度も何度も再生していた。
日差しが暑くもなく、吹く風が寒くもない明瑞の幼きある日のこと。
そのときの明瑞は特に理由もなくただひたむきに教科書を読み、先生の話を聞き、板書をノートに書き写すことを好む児童だった。
だから、その日も国語の教科書を、日本の古典についての文章を一生懸命に読んでいた。
何とはなしにページを開き、目でなぞるのは明朝体の大きく強調された文字、方丈記の冒頭三行。
"ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。
世の中にある人と栖と、またかくの如し。"
これを読んだ瞬間、まるで目の見えない人が生まれて初めて水が流れるものだと知ったときのように、明瑞の頭の中に明確なビジョンが浮かび上がってきた。
川に突き刺さり、流れゆく水を絶え間なく裂く一振りの刀。
先生の声も意識の外、明瑞は呆然と文章を見つめ頭の中に描かれた映像を何度も何度も再生していた。