RECORD

Eno.966 棚町ミヲの記録

【Ex記録】そう、マグカップの持ち手とか いや全然もっと他にも色々ありますよ気になりますか見ますかどうですか

……
……………

「では、あのペットボトルを壊してみろ。」

「…………ぬ、ぐ…………。」



テーブルの上に置かれたペットボトルを、触れずに触ろうとする。
……トリックアートみたいに、遠近をないようにして。

しかし、ペットボトルはびくともしない。
当然のことが、当然に起こりつづけている。
……より正しく表現するなら、当然、何も起こらない。


「……そこまでだ。安心した。
 そう簡単に遠近無視なんてできたらたまったもんじゃない。
 私の仕事がずいぶん増える……」

「え~っと、おかしいな……。
 前に報告した『雲を砕けた』ってのは気のせいだったかもだけど、
 普段、依頼を受けて仕事してる時はたまに、2mぐらいなら…………」

「恐らくそのほとんどは後付けの技術によって得た間合いだし、
 そうじゃなかったとしても、"壊してみたい"もの以外には影響を出せないんだろう。
 衝動に由来する神秘の発現というのは王道中の王道だ。」


「そもそも、通常の能力発揮の力もだいぶ落ちているようだな。
 神秘をコントロールする技術を学んでいる分でカバーできているようだが、
 私たちが初めて会った時の方が、神秘に迫力があった。」

「推測だが、抑制せずに使いこなすと覚悟を決めてしまった副作用で、
 ずっと我慢していた衝動が弱まったんじゃないか。」


「うぅ~~……ままならない……。
 とりあえず今は戦闘行動が必要な時に
 なんとか覚悟を決めて誤魔化してますけど……。」

「お前はいつでもどこでも覚悟を決められるのか?
 必要な時に衝動をコントロールする訓練が必要だと話しているんだ。
 制御できても、制御できなくても、困るのはお前だぞ。」



「……お前もずいぶん落ち着いたし、ヒアリングでもするか……。
 たまには上のバカにもわかりやすい形で
 仕事をしている所を報告してやらないといかん……」


お前、普段は、どういうものを壊してみたいと思うんだ。



「そうですねぇ、例えば、ちょっと待ってくださいね……」








「ではまず1枚目……」


「待て」

「えっ。はい。」


「………それは、いつも持ち歩いているのか?」

「うん。バッグ持って人と会う日は。」

「…………………………………」

「続けますよ?」





「"こちらからならどこから切れます"って書いてるやつを、
 本当にどこからでも切れるか確かめるように細切りにすると、むちゃくちゃいいです……」


「……。」




「きゅうりの皮をバナナみたいにうまく剥けると、なんだかわくわくしますよね……」


「………………。」




「クリップをピンと伸ばした後、ちょっと小さいクリップに作り直せると興奮します……」


「………………………………。」




「続いて、小学生が使うタイプの筆箱を……

馬鹿。おい。そういうのじゃない。わかれ。
 それらも確かにお前の神秘に関わる重要な要素ではあるが、
 今話題にしたいのは、"破壊"を主題にした………………



「………。」

「………。」

「ひょっとして、それ……今日初めて人に見せたのか。」

「……………はい……………。」


「……………。」

「続けろ。」






……………

………………………………

………………………………………………………



「今日は以上だ……さっさと帰れ……。」

「はい!ありがとうございました!」



ツカツカツカ。バタン。


「……何をやってんだ私は……。」


(…………。)


(…………………"ボタンが多いテレビのリモコンを───"は、なかなかよかったな……。)