RECORD
【Ex記録】人物評:一樺チカ
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……………
「前からずっと繰り返している事だが、
お前の口から周囲の人物について聞きたい。
一樺直という男についてはまだ一度も聞いていなかったな。」
「チカくんは、束都の同い年の男子です。
……確か神秘管理局に所属してたはずだから、
人柄以外のところはナレッジさんの方が詳しいんじゃない?」
「知らん。私が担当している人間ではない……顔を合わせる担当がいるのかどうかもわからん。
今日のお前との面談に合わせて、局にある申請書類を確認した程度だ。」
「お前にはわからんだろうが、業務に必要な情報以外を手に入れる方法は少ないんだよ。
特に私は担当分野がかなり狭いから、普段は何も知らん。」
「何か私だけ知っていそうなことと言えば……
ここ最近で、心象エネルギー哲学を学んでいるようだな。」
「とはいえこの分野は"幅広く求められる専門知識"だし、
単に知識を求めて受講する人間も多い課目だ。
これだけでわかることはないと言えるだろう。」
「あぁ、そういえばそういう名前のテキスト持ってたかも。
チカくんと神秘の関係については全然知らないな……。」
「チカくん、すごくやる気ありそうな人なんですよね。
勉強できないって言ってるけど、それを言い訳にしてない感じ?
……今話すのって、こういう漠然とした話でいいんですよね。」
「それでいい、一樺チカのパーソナリティを調べたいわけじゃない。
知っておきたいのはあくまでお前の事……周囲との関係値や、今言ったような相手への印象なのだ。
仲がこじれても困るから、信頼を損なうような密告はするなよ。」
「わかってますわかってます。確認しただけ。」
「で、チカくんとは、前報告した、ょ…灰原くんやヌヴェルさんと一緒に会ったりします。
特に灰原くんはかなり心を許してる感じ……。
あ、私、チカくんはヌヴェルさんの事好きなんじゃないかと思ってるんですよね。ワンチャン。」
「……それ、"信頼を損なう密告"じゃないか?」
「ただの高校生の恋バナじゃないですか。
年上なのに友達みたいに仲良く話してるから、狙ってるんじゃないかなーって。
……二人とも、私がイメージするような恋愛に興味なさそうではあるけど。」
「相手と場所によって恋愛脳のスイッチを切り替える方法を学べ。
人の関わりや距離を全部そうしてしまうのは……お前の年齢ならしょうがないが、青すぎる。
やたらと人をくっつけたがるのは、はしたないし迷惑だ。」
「……つーかよく考えたらチカくんは、年上誰にでもタメ口か。
なんでなんだろう?先輩からかわいがられそうなタイプなのにもったいない。」
「"上から目線でかわいがられる"ってのが嫌なんじゃないの。」
「わかんない。……やっぱりもったいないって思うんですよねぇ。
チカくんはあんまり、自己評価と他者評価が一致してないんですよ。」
「努力家で、ちょっと皮肉っぽいところとか冷めたところはあるけど、話も上手。
友達いないいないって言うけど今言った通り私たちは友達のつもりだし……」
「……だから、あんまり自分のこと下げられると、
ちょっとイラッとすることもある。
好き好んであんたと話してる私の前でそんな事言っちゃうんだ、って。」
「思うのは勝手だが、お前にも無神経な部分があることは自覚しておけ。
お前がそいつを高く評価しているのは、勝手に"悪いところ"を無視しているだけだ。」
「そんな言い方……」
「自分を卑下する人間にはだいたい、それなりの経緯があるんだ。
反撃する余地もなく馬鹿にされ続けてきて自分に自信を失ってる、だとか。
言い訳の材料すらないから、自分に身の程を言い聞かせてる、だとかな。」
「……私が、チカくんが自分を下げる理由……とか、経緯・経験について
ぜんぜん知らないのは確かにそうですけど。」
「実際、お前の"努力家"という評と"冷めた印象"という評は、少しちぐはぐだ。
何か勘違いしているんじゃないのか。……あるいは、
最近になってそれら2つが混ざり合った過渡期なのかもしれんが。」
「で、そんな友達を応援したい、そういう姿が立派だ、
他にもいい所がいっぱいある、てのがどうして無神経になるわけ?」
「お前はどこまでいっても他人なんだよ。棚町。
お前がどれだけそいつを立派だと思っても、
そいつが自分自身を好きになれるかどうかは完全に別の問題だ。」
「一樺チカが劣等感を抱えているのなら、それはそいつの荷物だ。
お前はそれを奪うべきじゃないし、ましてや"気にしなくていいもの"にすべきじゃない。
一樺チカ自身が持てるようにならないと、意味がない。」
「抱える荷物の重さが、そいつの人生に重みを与える。
軽い人生は、人任せ、風任せになってよろしくない。」
「忠告しておくが、そいつの態度に"イラッとする"事があっても
立場を奪って代理で怒ってやるような真似はするなよ。絶対に。」
「……じゃあ、チカくんともっと仲良くなるときは、
荷物は預かるんじゃなくて持てるように応援したり、
代わりに怒るんじゃなくて私目線でだけ怒るように気を付けたほうがいいって……?」
「……たとえが多すぎてなんかわけわかんないですよ!
もっとハッキリ物事を言ってください!」
「詩的表現が増えるのは、神秘に携わる者の職業病だ。
既知の語彙に存在しない世界を頭で抱えて生きていれば、
口先に降りてくる頃には抽象表現と比喩でいっぱいになる……。」
「そういうのがわかんないっていってんの!!」
