RECORD
Eno.207 曲輪木 丑緒の記録
第5回神秘進化学概論 宿題
束都京帝大学 人文学部 2年生
虚戯 遊真
神秘と人間の関係のあるべき理想形について
私はこのテーマに対して、裏世界に関わる中で見えてきた「現状の神秘と人間の関係が抱える問題点」をもとに、裏世界と表世界が交わる「ぬるま湯の時代」が訪れることを前提として、そうなる前に何をすべきか、そうなった後にどのような社会を形成すべきかについて掘り下げていきたいと思います。
1.現状の「神秘と人間の関係」の問題点
2.「ぬるま湯の時代」を前に備えるべきこと
3.新たな社会構造「異界/境界モデル」
4.「異界/境界モデル」において重要なこと
5.まとめ
1.現状の「神秘と人間の関係」の問題点
・表と裏、両者の明確な侵略を制限する法律や倫理基準が整備されていない。
・神秘や裏世界に対する知識や理解の浅い人間が、裏世界を取り巻く問題に簡単に関われてしまう。
・異なる世界が交わることから生じる問題や苦しみを相談/共有できる場所が限られている。
2.「ぬるま湯の時代」を前に備えるべきこと
・神秘や裏世界に関わる人材を育成する機関や学問分野の充実
・表と裏、両者の侵略を制限する法律や倫理基準の整備
・神秘や裏世界に関わる問題を抱えた者を支援する機関、制度の充実
・裏世界へ向けた、可能な限りでの表世界のルールの周知
これらの備えは、後述する「異界/境界モデル」への準備段階でもあります。
3.新たな社会構造「異界/境界モデル」
私は、神秘と人間の関係のあるべき理想形は「距離を置いた共存」であると考えます。
表世界と裏世界、異なる道理を持つ世界のものがぬるま湯の時代の到来によって混じり合ったとき、互いの均衡を保って生きていくために重要な要素として「距離を取る」という言葉が浮かびました。距離を取る、と聞くと険悪な関係や、差別といったマイナスなイメージが浮かぶかもしれませんが、異なる道理をもつもの同士が一定の距離を保つことによって両者の関係を良好に保つ上で優位に働く事例も多く存在しています。
距離を保つ方法として、別居婚が例として挙げられます。
別居婚とは婚姻関係にある夫婦が合意の上で同居せずに離れて暮らすという生活形態であり、この形態を取る場合、多くは相互に距離を意図的に離すことで、互いの価値観や生活リズムを尊重し良好な関係を構築することを目的としています。
別居婚のように、異なるものが無理に混じり合おうとせず、お互いを離れた場所に置く「距離を置いた共存」は、神秘と人間がうまく付き合っていく上で有効な関係であると言えます。
そこで、「距離を置いた共存」をより具体的に考えるため、民俗学等の分野で重要な要素とされる「異界と境界」の概念を参考に「異界/境界モデル」という社会形態を考えました。
民俗学では、「異界」はこの世ならざる領域(あの世、神域、妖怪の棲み処など)を指し、「境界」は、日常の空間と異界を隔てる物理的・精神的・儀礼的な区切り(村境、道祖神、家の敷居など)とされ、我々の住む秩序の世界と、未知に満ちた混沌の世界、またその世界と秩序の世界の交わる場所を区別するために用いられてきました。
「異界/境界モデル」はこの異界と境界の概念を用いて、ぬるま湯の時代において混ざり合った表世界や裏世界に生きる全ての存在を「人間界」「境界」「異界」の3つの領域に再分類し、「禁忌」によって両者の不可侵領域を保守する社会形態です。
【定義】
「人間」──現状において神秘を持たず、裏世界との関わりがない者。
「境界人」──現状において「混ざり物」とされる者
この世と異界の両方と関わりを持つ者。人間、怪奇を問わない。
「人間界」── 科学、人間、秩序の領域。
現状における表世界に近いルールや法則で機能する
異界のルールや神秘の基礎知識を義務教育で学習する。
異界への境界を挟まない干渉を禁止する。
「境界」──境界人の領域。
異界と人間界を繋ぐ中継地点であり両者の文化交流と議論の場。
人間界と異界のルールを詳細に学び、中立的なバランサーとしての役割を持つ。
「異界」──神秘、怪奇、混沌の領域。
現状における裏世界に近いルールや法則で機能する
人間界のルールや科学の基礎知識を義務的に学習する。
人間界への境界を挟まない干渉を禁止する。
「禁忌」──絶対に守らなければならない基準
人間界は異界を侵さず、異界は人間界を侵さない。
人間界や異界の存在が相手の世界に関わるためのパスポート制度や資格を設ける。
両者が交わる場合は必ず境界人がそれを監督することによって、2つの世界のトラブルを防止する。
4.「異界/境界モデル」において重要なこと
「3つの領域は全体としては一つの世界であり、相互に影響を受けて変化していくもの」「分けた上で切り離さない」という意識を全体に広めていくことが重要です。
異界と境界と人間界は、あくまでそれぞれの領域と精神的に距離を置き、自身のアイデンティティを保護するために存在するものであり、互いの存在を否定してはいけないという考えを明確にし、広く普及させる必要があります。
5.まとめ
神秘と人間の関係のあるべき理想形は「距離を置いた共存」であると考えます。
「ぬるま湯の時代」という世界の融合を前に、現状の法・倫理基準の未整備、知識不足、支援の少なさといった問題を解決し、人間が裏世界を受け入れる社会基盤を作り、その上で新たな社会基盤を構築し直す必要があります。
提唱する「異界/境界モデル」は、人間と神秘が距離を保ちつつ共存を目指す社会形態です。境界人が監督し、禁忌で不可侵領域を守り、「分けた上で切り離さない」意識を共有することが重要です。
虚戯 遊真
神秘と人間の関係のあるべき理想形について
私はこのテーマに対して、裏世界に関わる中で見えてきた「現状の神秘と人間の関係が抱える問題点」をもとに、裏世界と表世界が交わる「ぬるま湯の時代」が訪れることを前提として、そうなる前に何をすべきか、そうなった後にどのような社会を形成すべきかについて掘り下げていきたいと思います。
1.現状の「神秘と人間の関係」の問題点
2.「ぬるま湯の時代」を前に備えるべきこと
3.新たな社会構造「異界/境界モデル」
4.「異界/境界モデル」において重要なこと
5.まとめ
1.現状の「神秘と人間の関係」の問題点
・表と裏、両者の明確な侵略を制限する法律や倫理基準が整備されていない。
・神秘や裏世界に対する知識や理解の浅い人間が、裏世界を取り巻く問題に簡単に関われてしまう。
・異なる世界が交わることから生じる問題や苦しみを相談/共有できる場所が限られている。
2.「ぬるま湯の時代」を前に備えるべきこと
・神秘や裏世界に関わる人材を育成する機関や学問分野の充実
・表と裏、両者の侵略を制限する法律や倫理基準の整備
・神秘や裏世界に関わる問題を抱えた者を支援する機関、制度の充実
・裏世界へ向けた、可能な限りでの表世界のルールの周知
これらの備えは、後述する「異界/境界モデル」への準備段階でもあります。
3.新たな社会構造「異界/境界モデル」
私は、神秘と人間の関係のあるべき理想形は「距離を置いた共存」であると考えます。
表世界と裏世界、異なる道理を持つ世界のものがぬるま湯の時代の到来によって混じり合ったとき、互いの均衡を保って生きていくために重要な要素として「距離を取る」という言葉が浮かびました。距離を取る、と聞くと険悪な関係や、差別といったマイナスなイメージが浮かぶかもしれませんが、異なる道理をもつもの同士が一定の距離を保つことによって両者の関係を良好に保つ上で優位に働く事例も多く存在しています。
距離を保つ方法として、別居婚が例として挙げられます。
別居婚とは婚姻関係にある夫婦が合意の上で同居せずに離れて暮らすという生活形態であり、この形態を取る場合、多くは相互に距離を意図的に離すことで、互いの価値観や生活リズムを尊重し良好な関係を構築することを目的としています。
別居婚のように、異なるものが無理に混じり合おうとせず、お互いを離れた場所に置く「距離を置いた共存」は、神秘と人間がうまく付き合っていく上で有効な関係であると言えます。
そこで、「距離を置いた共存」をより具体的に考えるため、民俗学等の分野で重要な要素とされる「異界と境界」の概念を参考に「異界/境界モデル」という社会形態を考えました。
民俗学では、「異界」はこの世ならざる領域(あの世、神域、妖怪の棲み処など)を指し、「境界」は、日常の空間と異界を隔てる物理的・精神的・儀礼的な区切り(村境、道祖神、家の敷居など)とされ、我々の住む秩序の世界と、未知に満ちた混沌の世界、またその世界と秩序の世界の交わる場所を区別するために用いられてきました。
「異界/境界モデル」はこの異界と境界の概念を用いて、ぬるま湯の時代において混ざり合った表世界や裏世界に生きる全ての存在を「人間界」「境界」「異界」の3つの領域に再分類し、「禁忌」によって両者の不可侵領域を保守する社会形態です。
【定義】
「人間」──現状において神秘を持たず、裏世界との関わりがない者。
「境界人」──現状において「混ざり物」とされる者
この世と異界の両方と関わりを持つ者。人間、怪奇を問わない。
「人間界」── 科学、人間、秩序の領域。
現状における表世界に近いルールや法則で機能する
異界のルールや神秘の基礎知識を義務教育で学習する。
異界への境界を挟まない干渉を禁止する。
「境界」──境界人の領域。
異界と人間界を繋ぐ中継地点であり両者の文化交流と議論の場。
人間界と異界のルールを詳細に学び、中立的なバランサーとしての役割を持つ。
「異界」──神秘、怪奇、混沌の領域。
現状における裏世界に近いルールや法則で機能する
人間界のルールや科学の基礎知識を義務的に学習する。
人間界への境界を挟まない干渉を禁止する。
「禁忌」──絶対に守らなければならない基準
人間界は異界を侵さず、異界は人間界を侵さない。
人間界や異界の存在が相手の世界に関わるためのパスポート制度や資格を設ける。
両者が交わる場合は必ず境界人がそれを監督することによって、2つの世界のトラブルを防止する。
4.「異界/境界モデル」において重要なこと
「3つの領域は全体としては一つの世界であり、相互に影響を受けて変化していくもの」「分けた上で切り離さない」という意識を全体に広めていくことが重要です。
異界と境界と人間界は、あくまでそれぞれの領域と精神的に距離を置き、自身のアイデンティティを保護するために存在するものであり、互いの存在を否定してはいけないという考えを明確にし、広く普及させる必要があります。
5.まとめ
神秘と人間の関係のあるべき理想形は「距離を置いた共存」であると考えます。
「ぬるま湯の時代」という世界の融合を前に、現状の法・倫理基準の未整備、知識不足、支援の少なさといった問題を解決し、人間が裏世界を受け入れる社会基盤を作り、その上で新たな社会基盤を構築し直す必要があります。
提唱する「異界/境界モデル」は、人間と神秘が距離を保ちつつ共存を目指す社会形態です。境界人が監督し、禁忌で不可侵領域を守り、「分けた上で切り離さない」意識を共有することが重要です。