RECORD
Eno.113 松林武の記録
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この辺りの土地勘を得るために歩いていた、のだが。
……此方に踏み入れた時、ふ、と嫌な予感。
物陰に、と思った時にはひどく近くにそれの姿が目に映る。
「……… ぁ、」
この男は初めて、人型の怪奇を見た。
今までまみえたのは、機械だったり玩具だったり妖精だったり
そんなものばかりだった。
そんなものばかりだと、思っていた。
だってそうだ。
討伐系の依頼には目を通していなくて、
それ故に、そんな怪奇が居る事を、
無意識下に認識していなかった。
「────ッ゛、」
がん、と
虚ろな人型が大きく此方に腕を振るう。
反動をひとつも気にせず、効率も気にされてないその動きが
茫然と立っていた男の身体に強くぶつかった。
ずざ、と地面を身体が滑る。
「ぉえ……ッ゛……」
「……、 」
殴られた衝撃で眼鏡が何処かに行ってしまった。
ぼやけた視界でも、すぐそこに怪奇が居るのは見えていた。
……口の中に血の味がする、視界がぐらつく。
このままじゃ危ない、逃げないとと思う反面で、
沁みついた被害者意識が囁いているのを感じていた。
────逃げたら、次はもっと酷い目に遭うんだ と。
──仮に逃げおおせたとしても、次が。
──連中が飽きるまで耐えればいい。
──やり返したら、やられるんだから。
──どんだけ酷い目に遭ったって、死にはしないんだから。
…………嗚呼、ほんとうに
