RECORD
Eno.143 八坂 金寿の記録
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それでも、歩くしかないのなら。
触れずには、
――歩いている。
いつの間にか迷い込んでいた
馴染みのない、伽藍洞の街並みの中。
どこまでも続く入り組んだ道を。
ただ、歩いている。
……ずっと。
このままここに、居続けたら。
どうなるのだろう。
そも、帰る必要なんてあるんだろうか。
自分の居るべきは、こちら側なんじゃないか。
かくれんぼのまま、みつけてもらえない子は。
神隠しにあうべきだったんじゃないか。

>>1976476
…常は考えない為に歩いていた。
頭の中の余計なものを掃う為に。
それでやってこれていた。最近までは。
なのに、こうして世界はぐるりと反転して。
目まぐるしく、色々なものが、変わってゆく。
守るべき日常も、その為の秩序も、崩れてゆく。
向き合わずに済むのなら、どれほどよかっただろう。
それでやり過ごせたのなら。許されたのなら。
立ち止まる。靴音が止む。
自分の呼吸の音すら気になるほど、静かだ。
ぼんやり見上げた空は、どこまでも赤い。
どれ程待っても、星が見えることはないのだろう。



>>1976546
「…………」
帰ろう、だなんて思えなかった。
どこに帰ればいいか、わからなくなってしまった。
それでも、歩くしかないのなら。