RECORD

Eno.46 篠目 樹の記録

act 3

どこまで行っても、いつまで経っても不気味な教会が広がってステンドグラスは夕焼けを照り返していた。

「何だよ……ホントになんなんだ!!!
 痛ッ!?

叫んだ途端に再び痛みが走る。
今度は脇腹、触れば掌が赤く染まった。

あっ、はぁ……に、にげないと……

いきなり知らない場所に放り出されて斬られて酷く血の気が引く感じを覚えたのは今も記憶してる。
其処からは無我夢中で逃げた。

「はぁ……はぁ……あぐっ……」

逃げて吐息が漏れる度に体に熱が迸ったと思ったら血が噴き出す。
誰も居ないのに、何も居ない筈なのにいつの間にか死に掛けていた。
見えない脅威に肌に纏わり吸い付く死の恐怖。
その内床に座り込んでしまっていた。

(……死ぬのかな)

ほぼ回らなくなった頭でぼんやり考えた。
親不孝は何度もした、喧嘩だってしたし、至らないことで人を怒らせたこともある。
だから、報いなんだと思った。
だから受け入れようとして───

たすけて

──と聞こえた気がした。
ほぼ上がらなくなった頭を起こして見れば何かが居た。
酷く錯乱したような動きをしながら翔ぶナニか、それに縋り付くナニか。
錯乱した方は後でかまいたちの怪奇と教えて貰った。

たすけ──

また、何か聞こえようとして、そして縋った方が斬り落とされた。
丁度自分の目の前、音も立てずに落下した。

たすけて、たすけて、たすけて

声ばかりが煩くなって。
何にも見えなくなって。
ただ、最後になるなら。



手を差し伸べた救いたかった

───


「そんなこんなで生き延びて、神秘に触れて、上京した訳だけど」


「ふと、たまに思うんだ」




────あそこからもっと早く抜け出せていたら


「ホントにたまにね?」