RECORD

Eno.83 大御門 錦慈の記録

その後

それまでの記録





目が覚めた時視界に入ったのは、見覚えのある自室の天井だった。


何が起きたのか自分ではうまく思い出せなかったけれど、
鬼怒川さんたちがいうには僕は"失敗した"らしい。
怪奇から神性神秘を奪い取った後に、
僕はそれの制御を行うことができず、結果気を失った……のだとか。
詳細を思い出そうとすると記憶が遠くにいってしまうような、
不思議な感覚に陥ったが、それは過度に神秘を浴びた後遺症らしい。
彼らが言うにはある日ふと、思い出すだろうから心配いらない……とのことだった。

彼らが全て話してくれているのかはわからない。
彼らからすれば僕はルールを破った存在だからだ。
当然、僕が所持していては困る情報もあるだろう。
思い出せないことがあるのも……果たして本当に後遺症なのかどうか。

「……ああ、失敗したのか……」

一人自室で呟く。
家の者たちには鬼怒川さんたちがある程度ぼかして説明してくれたんだろう。
みんな心配げな顔をしながらも、少し期待するような目をしていた。
恐らく彼らなりにあやふやに伝えられた理解不能な出来事を咀嚼した結果、
彼らの中にあった僕自身の格が上がってしまったのかもしれない。

「……まあ、無理もないか……」

個人的には失敗してしまった結果の表れなのでうれしくはないが、
こうなったことでみんなに失望されずに済んだのはありがたい。
やはり、たかが高校生を崇めてる人たちの目は曇っているのだろう。


閉じていた片目を開く。
失敗した結果失ったのは記憶だけじゃなかった。



僕の片目は色を失っていた。
瞳としての役割を終えて電源が切れてしまったかのように。

鬼怒川さんたちによればこれも無茶をした代償のようなものなのだとか。
最悪命すら落としていたのだとひどく怒りながら説明してくれたことだった。
……僕からすれば、片目が使い物にならなくなることは最悪ではあるのだけれど。

「……また、やれることが減っちゃったな……」

僕の色の変わってしまった瞳を見て、
家の人たちは色めき立っていたけれど。
僕自身にとってはマシなことどころか、最悪だった。
ただでさえ、自分にはできないことが多いというのに
使い物にならない部分が出てきてしまうなんて。

重く息を吐いて再び天井を眺める。

ズレてしまった視界に慣れるため少しの間学校を休むことになってしまったが、
ただぼんやり療養するというのも自分の性分には合わない。
どうせ鬼怒川さんたちが様子を見に来ることもないので、
布団から身を起こして机に向かう。この家に僕のやることを止める人はいない。

「…………あれ、こんなの持ってたっけ。」

軽く勉強でもしようと机の上に本を積めば、
欠けた視界の端にミニカーが置かれているのが映った。
僕自身がこんなものを買うわけがない。
みんなの中にコレをくれそうな子供なんていたかな、と首を傾げる。

「……まあいいや、しまっておこう。」

たぶん誰かからもらったんだろう。
片付け忘れていたのかもしれない。
こんなもの机の上に飾るように置くなんて、
自分がするわけないのだから。

ミニカーを引き出しの中に押し込む。
捨ててしまうのは簡単だけれど、
誰かからもらったものだと後で困るから。

「とりあえず、
 今の僕にできることを磨かなきゃな……」

パラパラと本を捲る。

まだ失望されていないのなら、
まだ期待されているのなら。

ちゃんと神様をやってあげないといけないから。

可哀想な、みんなのために。