RECORD

Eno.832 雪村六花の記録

六花ちゃんの「食」の事情

その匂いをかいだ途端、頭が痺れてぼーっと何も考えられなくなり……気付けばふらふらと近寄っていた。
怖かった。きっと、もしあの場で二人きりだったなら彼の精気を吸いつくしていただろう。
名前はわからないが1年生の子だっただろうか。そういう体質なのかわからないけれど、私には美味しそうなごちそうにしか見えなかった。
人に限りなく近い姿をしているだけで、私は人間ではなくてバケモノなんだと実感してしまう。
ビジター達が依頼で狩っている敵性怪奇と私に違いがあるとしたら、まだ・・人に害を与えてないというだけに過ぎない。

そういえば香花が言っていたっけ。

六花……おまえの心を凍らせたのは、おまえを守るためでもあるんだよ。
欲望のままに人に危害を加えればすぐに正体がバレてしまう。人間はおまえを敵とみなし、殺すだろう



何か月もアイスだけで人の精気を吸っていないし、ずっと我慢しているからもう限界なのかもしれない。
でも、凍った心でなら衝動に抗うことなんて簡単なことだった。


今は……とても苦しい。
知らなかった色んな気持ちがごちゃ混ぜになっている。
人の精気を吸いたくてたまらないけど、誰でもいいから……なんて思えなかった。
1年生の時そうしていたようになんて。

あの時はなんとも思わなかった。ただ「食事」をしているだけ。
今になってふつふつ湧いてくるこの気持ちは……羞恥心とか後悔とかだろうか。
確井くんが、他のみんなが知ったらどう思うだろう。
幻滅されてしまうだろうか。





すごく怖い。
こんな気持ちになるなら、溶けないままのほうがよかったかも……なんて思ったりもした。



学校、行きたくないな…。