RECORD

Eno.423 甘露 繋の記録

目まぐるしくて覚えていないや

──夢を見ていた。
幼い頃から幾度か見ている同じ夢だ。
薄くぼやけ続けていた輪郭が、今日は少し違った。

僕はどこかに座っていて、
その周りには水が管を通る音が絶え間なく聞こえている、そんな夢だ。

僕はこの世界に慣れてきたんだ。
誰かを守るための、大きな大きな船になるんだ。

夢の中の僕は、そう思っていた。



場面が急に霧に包まれて変わる。
夢だから、そういうものだ。


僕はどこかに座っていて、
その周りには水が管を通る音が絶え間なく聞こえている。

誰かがその『どこか』の扉を叩いている。
何度も、何度も、何度も叩く。
扉が歪んでいて、うまく開けることができないのだろう。



僕の手元を見ると、裏世界で使っているシールドがあった。
待ってて、少しくらいはこれで力になれるよ。

正直、最初に裏世界に来た時の僕はとても浮ついていて、
熱に浮かされたようで。
弟は、友達は、先輩は、
そんな僕を見て心配しただろうか。
誰かしらは軽蔑したかもしれないな。

裏世界ではたくさんの人が戦っていた。
たくさんの人が力と、世界と向き合っていた。
今も悩み、苦しみながらも、前に進もうと船を漕ぐ人が
たくさんいるんだろう。

僕は……僕は随分と、あの世界に慣れてきた。
そういう人がいることを知ったからだろうか。
自分でも不思議なくらい早く、
裏世界の存在を当たり前に受け止め始めている。
だから夢にも当たり前に、シールドを片手に持ってきたんだろう。
良いことかと言われると首は傾げる。
僕が生きている場所は、表世界こちらなんだから。


でもそれが全部悪いことだとも思わない。


シールドで幾度か扉を突き返すと、
扉がパッと砕けて神秘片FRに変わった。

降り注ぐかけらを見ていると、
急激に身体が冷たくなった。
まるでバケツいっぱいの氷水が、
顔から背中にかけて浴びせられたよう。

何、何だよ。慣れてきたって言ったって
急にそんな現象が起きたら僕だって怖いよ。


そう僕が竦んでいると、
耳元で何かを詰まらせたような鳴き声がした。
カモメの鳴き声がした。

鳥には詳しくないのにどうして分かるんだろう?

あたりの霧が晴れて、六月の風が───




* * * * *



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繋のスマホ [Eno.423] 2025-06-16 07:06:59 No.2028698

*アラーム音*

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[Eno.423] 2025-06-16 07:07:16 No.2028715

「………」

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[Eno.423] 2025-06-16 07:08:45 No.2028837

「……あ、嘘。寝てた!?
あ〜、日曜の夜が……もったいないことしたなあ……」

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しかも少し遅い時間のアラームで起きちゃったから、
出かけるまでそんなに余裕がない。
ひとまずこの癖っ毛に寝癖でくしゃくしゃの頭をなんとかしないと……

何か長い夢を見た気はするけど、
内容はさっぱり覚えていなかった。