RECORD
Eno.1716 白夜暁の記録



――はじまりはなんだったか。確か飢えだったような気がする。
ひとりのいなくなれば冬を越せる、そんな日だった。
後付で足される呪いと時間は私をそういう存在に押し上げるには充分過ぎた。
それだけの話だ。

男は「こういう」のを調べて回っているという。その度に名誉を失ったものの回復をと奔走しているらしい。
実際に眺めてる範囲でも、私が触るだけで祟るという村人の言葉に対して過度に恐れることはなかった。それでも不敬でもなかった。
どうにも不思議な男だった。
しかし私には元より失う名誉はなかったし、悪神であることに何の感傷もない。これが当然だからだ。



白夜、と男は口にした。
夕焼けとはまた違う、太陽が沈まずに、夜になっても空が明るいままの世界があるという。
明けない夜はないので、と男は言って笑った。


名を与えられた。とうとうまともに名を与えられないまま千年の私に、名が――……。



暁、と男は名乗った。
暁に何が欲しい? と問えば何も要らない、自由が欲しいと言われた。
それは与えられない。おまえにもう自由はない。そして私に与えられるのは私の加護のみだ。
では、私が、おまえを恨んでいるものを祟ってやろう。
そう問えば、誰も恨んでいない、と言われた。
一人くらい居るだろう、と、少しいじってみても何も出てこない。
妙な男だと思った次には、あまりにも善良が過ぎる男だと感じた。
︙
あの生臭聖職者は私の目を見なかった。それは賢明だろう。
私はわきまえのある者は好きだ。花火のように生きるのもまた。
私は、なにもない分■■■■■。
奪われただけ欲しいだけだ。
名を忘れた男

俺は……ただ真実を知りたいだけなんです。貴方は、過去に何をされて――……。

おまえの気概は買おう、人の子よ。しかし。

知らぬままの方が良いこともある。愚か者が。
――はじまりはなんだったか。確か飢えだったような気がする。
ひとりのいなくなれば冬を越せる、そんな日だった。
後付で足される呪いと時間は私をそういう存在に押し上げるには充分過ぎた。
それだけの話だ。

あなたは確かに悪神かもしれない、しかしそのままでは……。
男は「こういう」のを調べて回っているという。その度に名誉を失ったものの回復をと奔走しているらしい。
実際に眺めてる範囲でも、私が触るだけで祟るという村人の言葉に対して過度に恐れることはなかった。それでも不敬でもなかった。
どうにも不思議な男だった。
しかし私には元より失う名誉はなかったし、悪神であることに何の感傷もない。これが当然だからだ。

では、せめて名前を。

くどい。そんなものはない。

何も、ないと?いよいよあんまりじゃないか……。なら、せめて。
白夜、と男は口にした。
夕焼けとはまた違う、太陽が沈まずに、夜になっても空が明るいままの世界があるという。
明けない夜はないので、と男は言って笑った。

ただ「神」、と呼ぶのは不便ですから。名前を。

……。
名を与えられた。とうとうまともに名を与えられないまま千年の私に、名が――……。

――ああ、気に入ったぞ。おまえ。

え、

おまえ、私だけを見ていろ。
暁、と男は名乗った。
暁に何が欲しい? と問えば何も要らない、自由が欲しいと言われた。
それは与えられない。おまえにもう自由はない。そして私に与えられるのは私の加護のみだ。
では、私が、おまえを恨んでいるものを祟ってやろう。
そう問えば、誰も恨んでいない、と言われた。
一人くらい居るだろう、と、少しいじってみても何も出てこない。
妙な男だと思った次には、あまりにも善良が過ぎる男だと感じた。
>>1999407
>>1999297
「…アタシはその人と直接話して解を解くタイプなのでね、その子にピタリと合う答は出ないかもですが」
ふい、と視線を上に逸らし、手元のグラスに移して
「生きるか死ぬかが神頼みとは、随分な事情を持ってるんでしょうな。その子が求める救いのなんたるか……猶予が在るのならその子をもっと知るべきでしょう」
グラスを回して氷を鳴らす
相変わらず視線は手元にだけ
「結局の所、解とは己を納得させることです。その子は貴方にその可能性を見たのやもしれません。貴方なりの方法でその子に色々な経験をさせてやる、が良いかと」
あの生臭聖職者は私の目を見なかった。それは賢明だろう。
私はわきまえのある者は好きだ。花火のように生きるのもまた。
私は、なにもない分■■■■■。
奪われただけ欲しいだけだ。
