RECORD

Eno.966 棚町ミヲの記録

【Ex記録】人物評:観音寺ゴゴ

……
…………

「今日は、そうだな。観音寺ゴゴについて聞こう。
 ……この前の避難訓練で"異世界"だの話しているの見ていて、少し危険な人物だと思った。」

「観音寺さんは、いっこ先輩のカンフーの達人。
 大宇宙形意拳っていう、見たものを取り込んで発展する
 オリジナルの拳法を極めようとしています。」


「普段の話を聞く限り、良くできた人間だ。
 お前が好きそうなタイプの人間ではないな」

「え、そうですか?
 観音寺さんのことはかなり好きだけど。」

「そもそも私あんまり"こういうタイプだから好き!"みたいな
 好みとか趣味ってぜんぜんありませんよ。」

「雁倉ヌヴェル、甲賀力、灰原依田、屋嘉比ヲグ……。」

「? 私が好きな先輩と、好きな人ですね?」

「……。自覚がないのか……。」

「……え?え?ほんとに何?
 久々に言ってること100%わかんない……」



「待て、今言葉を選んでる……。
 ……お前がよく名前を出す人間の中では、観音寺ゴゴは
 一方向に強く偏った特性のようなものが見えにくい、という話だ。」

「そうかなぁ。観音寺さんはすごく拳法に真摯ですよ。」

「……でも、よく考えると『拳法に人生を捧げている』ってよりは、
 『拳法を使ってよりよい人生を歩もう』って感じかも?
 そう言ってみれば一方向感は薄いですね。」



「ちょっとズレた所とかとぼけた所もあるけど、
 それ以上に芯が通ってて立派な人です。
 ……だから甘えちゃうことも多い。」

「甘える?先ほど挙げた人間に比べれば、
 あまり頼っている印象はないが。」

「例えば。……他の人より、ちょっと強いイジり方をしちゃうんですよ。
 "こいつは完璧超人だ!許せない!"みたいな強めの冗談とか。」

「本当はこれぐらい突っ込んでものを言ってみたいな、
 でもひょっとしたら気を悪くするかも、遠慮しよう……
 ってラインを、観音寺さん相手の時は踏み込んじゃう。」

「あとは、初対面の人が多いから慎重に空気を見ないとな、みたいな
 普段より気遣いが要る時間でも、観音寺さんがいたら安心できる。
 それで自分の役割をサボって任せてしまう。とか。」

「観音寺さんの懐の広さとか、万能性、
 人柄の良さに甘えてるんですよ。
 普段我慢していることを、我慢できなくなる。」

「ふむ。言わんとすることはわかった。
 よく言えば信頼していて、悪く言えばナメているんだな。」

「"ナメてる"は悪く言いすぎ……いやでも、本当、
 あともう一歩踏み込んだらそうやって怒られても全然文句言えません。
 それぐらい甘えちゃってる。」



「このまえ観音寺さんと話してなんとなくわかったことですが、
 私は誰かに話を聞いたり、一緒に何かをするのは得意でも、
 自分の役割を他人に預けるのは苦手なようです。」

「自分の役割を自分でまっとうするのは当然のことだが。」

「それはそうだけど……うーん……預けてもいい時とか、
 預けたい時も、あるじゃん?私だってたまには
 人の役割を少し預けてもらえると信頼されてるみたいで嬉しいし……。」

「そういうことができる人ってあんまり周りにいないけど、
 観音寺さん相手にはそれができちゃう。
 ……やりすぎかもってぐらいに。」


「観音寺ゴゴは、人に頼られたり、頼らせるのが、上手い?」


「そう!私が言いたいのはそれ!
 観音寺さんが横にいるのに頼れない状況があると
 ほんとむちゃくちゃ焦るもん……」



「……逆に、観音寺さんに同じことをしてあげられないのがさみしい時もある。
 弱点をなんとか見つけたいっていうのは冗談じゃなく本気で言ってる部分もあって、
 私から観音寺さんにできることを見つけたいんです。」



「ほんと、周りに隙がない人ばっかりで最近嫌になりますよ。
 よたくんもそうだし。……ヲグさんにも、こっそりそう思うし。
 みんな自分で何もかもできる人で、誰かに助けを求めなさすぎ。」

「お前が他人から影響を受けすぎなんだ。
 同じように他人に影響を与えられると思うな。
 人には人の人生があり、そこにお前の席がないことも当然ある。」

「……そんなことはないですよ。
 絶対に、それは、ありえない。」

「そこに席がないんじゃない。その人が強くて、私が弱いだけ。
 私がその人からの信頼を勝ち取って、頼れる人間になれば、
 絶対に同じ場所に立てるはずです。」

「私が、つい観音寺さんを頼ってしまうようにね。」


「……それは、推測?」

「それとも、お前の願望?」

「……回答できるほど、まだ考えられてません。」


「では、"同じ場所"に立つことになんの意味があるか、については結論が出ているのか。
 観音寺ゴゴはどうみても、お前の助けが無くても人生をまっとうするだろう。
 なぜお前は、観音寺ゴゴに頼られてみたいと思うんだ。」

「お前は"選ぶ"事には少し慣れてきたようだが、
 自分が選んだものを人に押し付けるのにはまだ不慣れに見える。
 ……エゴの押し付けは、お前の思う所ではないだろう。」


「その答えは出てます。観音寺さんに限らず。
 ……でも口に出して言いたくありません。
 自分で決めた事だけど、正直、すごくつらい……。」



「……あ~ぁ、思ったんだけど、こういう内心の部分で頼ってばかりで
 実際に直接相談したり頼ったりしないのはもったいないかもですね?」

「教えてもらおうかなぁ。カンフー。
 灰原くんの天体観測とかと一緒で、その人の人生に関わるような場所に
 ずんずん踏み込むのは無礼な気がして話したことないけど。」

「それがお前にとって効率的かどうかはわからんが、
 アイデアのひとつとしてはいいんじゃないか。」

「……ナレッジさんも一緒にどうです?
 きっと教えてくれますよ。
 私あなたが格闘技やってるとこ見てみたいです。」

「私はいい。私にとっては効率的ではない。
 口から火を吹けて、腕を10m伸ばせて、空から巨大な石を落とせる私が
 カンフーをやって何になる。」

「……身体動かしたくないって言った方が現実的ですよ。」

「できないと思うか?」

「わ!わ!ごめんなさい!立たないで!
 仮にできたとしてイメージが崩れるからあんまり見たくない!