RECORD

Eno.372 橘ネムの記録

【追想】邪の道1

僕が王から直接ものを受け取ったのは、10歳の誕生記念に頂いたナイフ一振りだった。
職人によって特注されたナイフ、自分だけのナイフとして与えられたそれと共に…王は記念にと狩の仕方を教えてくれた。
普段政務で忙しい王が、唯一僕にしてくれた親らしい事。

『――――』

あの時王が僕に何を言ったのかは覚えていない。
だが狩の感触は、それが王によって教えられた唯一の事という事実が。
僕を夢中にさせたのは間違いない。


はじめは、ただ狩をしているだけでよかった。
段々と増えていく教育の合間に、隙間を縫って動物たちを狩っていた。
それで十分だった。




王が反逆者を縛り首にした。
反逆者といってもなんてことのない。王への不信感を持つものを、見せしめにするための処刑。
王は「恐怖を見せる事も必要だ」といった。王であるには、これもまた必要だと。
僕は王の言葉につよく感銘を受けた。

処刑の際、捕まった少女が僕に語り掛けてきた。
私は何もやってない。どうか兄妹だけでも。どうかと。

それを聞いた時、心が躍ったのに気が付いた。
ああ、今僕はこれを好きにしていいのだ、と。
僕の一声でもしかしたら命が助かるかもしれない。王子の命なのだから。
だけどしなかった。”しないことを選んだ”

少女は処刑された。家族諸共。
酷く高揚感に胸が高鳴った。



あれ以来、狩はつまらないものになった。
前感じていた高揚感が、物足りない。
理由はなんとなくわかっていた。

王は最近忙しくしており、僕に構う暇はなくなった。
自分の評価だけを気にし、かくあれという言葉ばかりを投げるようになった。
僕はまた王と狩にいきたい。あの時のように何かをその手で教えてほしい。
そんな事は言えるわけもなく、ただ背中を見て…自分でどうするかを決めるばかりだった。








ある者に誘われ、パーティにゆく事になった。
パーティ自体は面白くもないものであったが、そのあと…衝撃的な事があった。
少女を一人、丁寧に”狩る”余興。
泣き縋るそれの身動きを封じ、末端から少しずつ――――

言葉にするのもおぞましいだろうそれに、僕は心を躍らせた。
許されざる行為。”人を狩る”所業。

だがそれを…僕ならば許されるはずだ、と。


僕はそれにどっぷりと嵌っていった。
最初は、処刑される者への温情として一人だけを指名して。
耐えれたら仲間を見逃す、といって。

皆感謝して最初は受け入れる。
だが最後は後悔して果てる。
そして皆処刑される。僕の行為は結果を変える事はない。どうせ死ぬはずだったものを、”使った”だけだ。

王にもその趣味は次第に明らかになっていった。だが、王は怪訝な顔をせど、僕を咎めはしなかった。
「好きにするといい」と、それだけ。
その時の王の目を覚えていない。
だけど何かを失った気がした。



僕は狩を、楽しみ続けた。
表向きは善良な王子としながら。