RECORD

Eno.268 飯屋 彩禍の記録

運命の歯車2.『災禍』

……

……

わたしの身体がわたしの言う事を聞かなくなって久しい。
未だ意識だけは残り続けている。
わたしは丁寧な言葉遣いはしないし、髪は結わない。
服装もおしゃれなんかしないし、もっと無骨だ。
メイド服なんて絶対に着ない。
人に挨拶もしない。
友達もいないし部活動もしなかった。
けれどよく祈る。
戦うために生きていたから。
たった一人の姉を守るために。

わたしが世間では死んだ事になった後の■■歳の春。
わたしは『飯屋』の家に引き取られる形で現実に戻ってきた。
―ある契約と、引き換えに。

『人間にしては珍しいね?適性は十分あるみたい』
『だから、依代になってくれない?』
『そうしたら貴方はもっと強くなれるよ』
『ずっと祈っていたでしょう?』

神秘生物。
或いは怪異に該当するのだろう。
名は■■■■■■■■■。
それは言葉に出来ず、理解できない。
名前として定義できず、人を常に見下すような視線―
全てを見透かされているような。
恐怖と同時に、
そんな存在がわたしだけを見ている。
異常な高揚感。

……その時はまぁいいかな、とも思っていた。
どうせ終わったような人生だったし。
全てが溶けて混じるような感覚は……少し複雑だったけれど。
でも、新しい私になれたような気分は悪くはなかった。

再会した姉に怪異と思われ、金属バットで襲われるあの日までは……


わたしはまだ、生きているのに。


ど う し て ?


わたし、まだ生きてるよ。

どうして?

強くなったよ。
あの日からずっと。


何か間違えたのかな?


わたしは人間だ。
酷く弱くて愚かだった。
無知だった。
衝動だけで突っ走った。
姉に守ってもらってばかりだった。

そんな人間だったはずなのに。

『もう諦めたら?そうしたら楽になれるのに』
『共存なんてできないよ』
『お姉さんも、わたしも』



わたしは、
まだ生きているから。
こんな悪魔の囁きには負けたくない。
負けたくないから。




わたしは祈るのをやめた。