RECORD
Eno.568 伊達白金の記録

伊達白金は、ついに念願とも言える異能を得た。……のかもしれない。
はじめは小さな違和感だった。
ドアノブに左手をかけると、バチっという衝撃。
乾燥する季節はとうに過ぎたはずだが、その後数回続けばさすがに違和感に気づく。
右手で金属に触れると何も起きず、左手では毎回バチっとする。
そのような法則を見つけたところで、左手の指先が発光していることに気づき、
とりあえずスマホで撮った。いや撮るだろ。
異常事態だが、心当たりはある。
伊達白金は連日、裏世界で神秘を宿す武装を纏い、怪奇と戦っている。
武装は電気の力で装着者の身体を無理矢理動かすものだ。
電流と神秘を浴び続けて電気人間になってしまったのかもしれない、と。
密かにそのような能力者に憧れていた厨二病罹患者伊達白金は、
不安4割期待6割で研究課に属する武装【ガルガンチュア】の開発チームに連絡を入れ、
そのままあれよあれよと検査の段取りが決まった、というのが一昨日の出来事。
速やかに衛生課での検査を取り付けてくれたチームスタッフに感謝しつつ、
放課後に早速管理局本部に向かったのが昨日。
問診や心電図にレントゲン、その他通り一遍の検査を行い、
本日、その結果をチームリーダー槙島から聞くべく、伊達白金はここにいる。
―――――――――
「待たせたねプラチナムクン。早速だが左手のコトについて話すとしよう」

「順を追って伝えよう。まず……、
キミもうっすら予想しているかもしれないが、
その左手の電流は、神秘を帯びたものだ」

「理由そのイチ。キミの神経電位を測定したが、数値上の異常はない。
【アダマント】による電気刺激の結果、神経が損傷したということも勿論ない。
今後も安心して性能試験を継続したまえ」
「理由そのニ。電流らしき光そのエネルギー強度に反して空気中を走っている。
空気とはそれなりに強力な絶縁体だ。一般に空気は電気をほぼ通さない。
通常、空気中を電気が通過するためには非常に高い電圧が必要だ。
強力な電圧を以て、電子が無理矢理に空気中を通過することで
ひび割れのような独特の起動を描き、電子が発光することでその道筋が視認できる。
これがいわゆる落雷の原理だが……。ここまではいいかね?」

「よかろう。――人体は空気に比べたら非常によく電気を通し、
基本的には電気は通りやすい道を進む。
これが通常の電気物理学に則った摂理だ。
仮に、プラチナムクンの左手に落雷級の電子が蓄積しているのなら、
その電子は指先から空気中に放出はされず、
プラチナムくんの体内を駆け巡り、足を通って大地に逃げようとするだろう。
結果、プラチナムクンは感電し、黒焦げになるわけだ」

「ザッツライ!
それは純粋な電気ではなく、電気っぽく見える別の現象!
そしてここに裏世界の条理を持ち込むのなら、
これもまた一種の神秘と仮説立てするのが相応しいだろう!」
神秘絡みというのは当初の予想のとおりだし、
一応の筋道を立ててもらえたことに安堵した。
しかし同時に、この現象はかなり電気っぽい挙動を示している気がする。
「それはきっと想像力が、そのような挙動の電流を想起したからなのだ。
キミか、あるいは【ガルガンチュア】に内蔵した神秘アイテムに宿る想像力がね」

「キミ、相手は神秘だぞ。殺しても死ぬとは限らん。
霊体とか、キミも何度も戦っただろう」

「そう怖がらないでやってくれ。【ガルガンチュア】がかわいそうだから。
……まあとにかく、我々の仮説をまとめるとだね。
裏世界で過ごすうちにキミの身体に蓄積した神秘由来のエネルギーが
実際の物理法則からすれば不正確な電流のイメージを象って、
そのように振る舞っている可能性が高い。
人間の意思により影響をうけている神秘エネルギーに関するデータは多数報告がある。
……であれば、そのイメージの方向性を意図的に操作できれば、
エネルギーの挙動はある程度制御ができるものと推察できる。
必要なのはイメージトレーニングだ」

「つまり根性論」

「まあしかし、このエネルギーを操作できるようになれば、
怪奇対策兵装として応用できる余地がある。
電撃攻撃とはなかなか浪漫があるじゃないか。
コレはコレでそそる研究テーマだぞぅ。
それに実際問題、キミも入浴とか水泳とかできないと困るだろう。
学校の授業だったり合宿だったり、川なり海なりへレジャーに出かけたり。
これからの季節は青春イベント目白押しじゃないかぶははははは」

「ならば四の五の言わずにイメトレに励み給え!
夏は待ってくれないぞぅ!!」

かくして、平穏無事な学生生活をエンジョイするべく、
伊達白金のイマジナリー電流を制御するための
地獄のイメージトレーニングがスタートした。
伊達白金と雷神の左腕(偽)

伊達白金は、ついに念願とも言える異能を得た。……のかもしれない。
はじめは小さな違和感だった。
ドアノブに左手をかけると、バチっという衝撃。
乾燥する季節はとうに過ぎたはずだが、その後数回続けばさすがに違和感に気づく。
右手で金属に触れると何も起きず、左手では毎回バチっとする。
そのような法則を見つけたところで、左手の指先が発光していることに気づき、
とりあえずスマホで撮った。いや撮るだろ。
異常事態だが、心当たりはある。
伊達白金は連日、裏世界で神秘を宿す武装を纏い、怪奇と戦っている。
武装は電気の力で装着者の身体を無理矢理動かすものだ。
電流と神秘を浴び続けて電気人間になってしまったのかもしれない、と。
密かにそのような能力者に憧れていた
不安4割期待6割で研究課に属する武装【ガルガンチュア】の開発チームに連絡を入れ、
そのままあれよあれよと検査の段取りが決まった、というのが一昨日の出来事。
速やかに衛生課での検査を取り付けてくれたチームスタッフに感謝しつつ、
放課後に早速管理局本部に向かったのが昨日。
問診や心電図にレントゲン、その他通り一遍の検査を行い、
本日、その結果をチームリーダー槙島から聞くべく、伊達白金はここにいる。
―――――――――
「待たせたねプラチナムクン。早速だが左手のコトについて話すとしよう」

「うっす。なんかわかったんスか?」
「順を追って伝えよう。まず……、
キミもうっすら予想しているかもしれないが、
その左手の電流は、神秘を帯びたものだ」

「まあ、そっスよね」
「理由そのイチ。キミの神経電位を測定したが、数値上の異常はない。
【アダマント】による電気刺激の結果、神経が損傷したということも勿論ない。
今後も安心して性能試験を継続したまえ」
「理由そのニ。電流らしき光そのエネルギー強度に反して空気中を走っている。
空気とはそれなりに強力な絶縁体だ。一般に空気は電気をほぼ通さない。
通常、空気中を電気が通過するためには非常に高い電圧が必要だ。
強力な電圧を以て、電子が無理矢理に空気中を通過することで
ひび割れのような独特の起動を描き、電子が発光することでその道筋が視認できる。
これがいわゆる落雷の原理だが……。ここまではいいかね?」

「お、おう。まだ俺の頭でもついていけてる」
「よかろう。――人体は空気に比べたら非常によく電気を通し、
基本的には電気は通りやすい道を進む。
これが通常の電気物理学に則った摂理だ。
仮に、プラチナムクンの左手に落雷級の電子が蓄積しているのなら、
その電子は指先から空気中に放出はされず、
プラチナムくんの体内を駆け巡り、足を通って大地に逃げようとするだろう。
結果、プラチナムクンは感電し、黒焦げになるわけだ」

「えっ怖。……でも、実際そうはなっていない。
これは左手から放出されてバチバチして、俺は感電してないから……」
「ザッツライ!
それは純粋な電気ではなく、電気っぽく見える別の現象!
そしてここに裏世界の条理を持ち込むのなら、
これもまた一種の神秘と仮説立てするのが相応しいだろう!」
神秘絡みというのは当初の予想のとおりだし、
一応の筋道を立ててもらえたことに安堵した。
しかし同時に、この現象はかなり電気っぽい挙動を示している気がする。
「それはきっと想像力が、そのような挙動の電流を想起したからなのだ。
キミか、あるいは【ガルガンチュア】に内蔵した神秘アイテムに宿る想像力がね」

「えっ【ガルガンチュア】の素材って意識あるの!?怖っ!」
「キミ、相手は神秘だぞ。殺しても死ぬとは限らん。
霊体とか、キミも何度も戦っただろう」

「うおぉ。急に寒気してきたぞ」
「そう怖がらないでやってくれ。【ガルガンチュア】がかわいそうだから。
……まあとにかく、我々の仮説をまとめるとだね。
裏世界で過ごすうちにキミの身体に蓄積した神秘由来のエネルギーが
実際の物理法則からすれば不正確な電流のイメージを象って、
そのように振る舞っている可能性が高い。
人間の意思により影響をうけている神秘エネルギーに関するデータは多数報告がある。
……であれば、そのイメージの方向性を意図的に操作できれば、
エネルギーの挙動はある程度制御ができるものと推察できる。
必要なのはイメージトレーニングだ」

「……つまり根性論?」
「つまり根性論」

「えぇー……」
「まあしかし、このエネルギーを操作できるようになれば、
怪奇対策兵装として応用できる余地がある。
電撃攻撃とはなかなか浪漫があるじゃないか。
コレはコレでそそる研究テーマだぞぅ。
それに実際問題、キミも入浴とか水泳とかできないと困るだろう。
学校の授業だったり合宿だったり、川なり海なりへレジャーに出かけたり。
これからの季節は青春イベント目白押しじゃないかぶははははは」

「そーだよ困ってんだよ!」
「ならば四の五の言わずにイメトレに励み給え!
夏は待ってくれないぞぅ!!」

「チクショー!!」
かくして、平穏無事な学生生活をエンジョイするべく、
伊達白金のイマジナリー電流を制御するための
地獄のイメージトレーニングがスタートした。