RECORD
Eno.477 三咲 湊の記録
【閑話】えさ
――2025年6月■日おやつ時。








束大附属病棟(裏)の一室には神秘管理局員のマシュと入院中のミナトの姿があった。机の上には種類さまざまな金魚の餌。




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――ドスドスドス。バンッ!

足音が次第に大きくなり、勢いよく病室の扉が開かれた。姿を現したのは、汗だくの紫村。





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「これ、食べてみます?」

「なにこれ」

「金魚の餌」

「魚だと思われてる?」

「味覚も変わるのかと思って……」

「病院食ちゃんと食べてたでしょ! せめて人間用のおやつに……」

「まぁ、そりゃそうか。これ、味しませんもんね」

「食べたの!?」
束大附属病棟(裏)の一室には神秘管理局員のマシュと入院中のミナトの姿があった。机の上には種類さまざまな金魚の餌。

「こっちはちょっとえびの味しますね」

「そんなに砂糖舐めるみたいにペロペロと……ちょっと気になってきた。少し分けてもらっても?」

「ん」

「本当だ。ちょっとおいしいかも」
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――ドスドスドス。バンッ!

「三咲さん!! たまねぎ食べたって本当ですか!?」
足音が次第に大きくなり、勢いよく病室の扉が開かれた。姿を現したのは、汗だくの紫村。

「魚だと思われてる?」

「あ~、たまねぎって人以外のほとんどの動物にとって毒だもんね。僕も重篤にはならないけど、それでもお腹ゆるくなっちゃうし……」

「ああっ、金魚の餌食べてる! や、やっぱり姿に合わせて食性も変わって…!?」

「いや、これは……」

「あっ、こっちの餌のほうがおいしい! 出汁味!」
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「ちょっとしたおちゃめじゃないか」

「患者に変なもの食べさせないでください。
――それにしても、何事もなくてよかった。すみません、三咲さん。本来であれば怪奇用の食事を提供するべきでしたが、行き違いがあったみたいで……」

「怪奇用の食事って?」

「野菜スープや鶏むね肉の蒸し焼きとかですよ」

「僕は嫌いじゃないけど、不評なんだよね。怪奇と人間……というより、動物と人間、どちらが食べてもいい食事になってるっぽくてさ。調味料を使わないから塩気が足りないんだよな~」

「そこは各自で調整していただく形で提供しています」

「はっ。もしかして、金魚の餌も調味料でおいしくなる可能性が……?」

「やめてください」

「塩かけたらいける!!」

「やめてください!」

「本当だ、いける!」

「本当にやめてください!!! あなたは人間! あなたは人間!!」