RECORD

Eno.103 長谷場 成の記録

白藍の帳

 サークルで人工海水ビーチに行くことになった時は何も考えていなかった。そういえば水着を用意しなければ──そう考えた瞬間、思い出したのだ。

 自室で、購入してきた水着を着てみる。……やっぱり目立つ。膝・すね・足首・足の甲にある長さ数cm~十数cmの、白っぽく盛り上がった手術痕。
 『脛に疵持つ』なんて言葉があったなってちょっと笑ってしまった。悪事ではないが人には言えないことを隠していてやましいところがあるのは確かだから。

 『この部室内では傷を怖がるような人はいないだろうから今後もネックゲイターを外していればいい』
 最近入部してきた明日夏くんに言った言葉だ。
 実際オレの足にたくさんの傷があろうとも、誰も気にしないだろう。

 ただオレは恐れている。
 ”やましいところ”が露見することを。

 『神秘とは、語られぬがゆえに神秘である』 のだから。