RECORD

Eno.610 幺幺山 美兎の記録

無題

失うことが怖い。
最初から何も無ければ失うものも無い。
得てしまえばいつか訪れる終わりに怯える事になる。
だから、何も手に入れない方がいいと理解している。


そのくせ、欲してしまう。
今ある孤独を耐えることが出来なくて。
誰かの傍に在る瞬間は生きている心地がして安心するから。



そしてその度に思う。
この人も、美兎を置いていくんじゃないか、って。
いつかパパとママみたいに美兎の前から消えるんじゃないか、って。
寂しいと泣いて縋っても戻ってきてはくれなくて、美兎を悲しませるんでしょ、って。




それが嫌だから、誰かが居なくなる前に消えてしまいたいと、たまに思う。
置いていかれるのはもう嫌だから。苦しいから。悲しいから。
そういう感情に振り回されるのは疲れるし寂しいから。

本当に、もう、あんな思いは二度としたくないから。



どうか誰も消えないでって祈りながら、今日を終える。
どうか美兎を殺さないでって祈りながら、今日を終える。