RECORD

Eno.113 松林武の記録

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マツタケ [Eno.113] 2025-06-19 14:30:22 No.2214470

「…………」

加熱終わりのバイブで咥え、
メンソールの香りを吐く。
部室で裏世界の話題が出て、
思わず逃げるように出てきてしまった。

強い忌避感を覚えた、事は、理解している。
逃げたところでその話はそこから無くならないことも。
ただ自分が、表と裏の境界を侵されたくないだけ。
裏に日常が侵食されていくのを見たくないだけ。

「…………はあ」

本当にずっと、自分ばかりがかわいいんだな、と。
呆れに似た自嘲が湧いてきて、それでいいんだと宥める自分もいる後ろで、
このままだと置いて行かれると。焦る気持ちが疼いているのだって気付いた。

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[北部学生区][北部裏ラウンジ]
マツタケ [Eno.113] 2025-06-19 18:15:49 No.2221561

日常の側から、彼らが吞み込まれないように
見守っていたいと思っていた筈だったのに。
表と裏の境界線を太く引いているが故に
表に滲みだすソレに着いていけなくて目を逸らしてしまうのは、
……本末転倒だろう。一体それで、誰の手がつかめると。

そんなのが言い訳な事も分かっている。

裏世界が、表世界を侵犯している。
日常に裏世界が滲みだしている。
それが当たり前になる事がただ恐ろしいだけだ。

異質なものや暴力が当然のように口にされるのも、
その中に身を置くことに疑問が抱かれないことも。

それらを受容できなくて、自分ばかりが置いてかれるのは恐ろしい。
独りでいる事なんてさほど怖くなかったはずなのに。


「……………」


受け容れてしまえばいいだけだ。
裏世界だって、主が作りたもうた世界なのだと
コンちゃんだって言っていたのだから、そうだと。

この混沌は拒むべきものではないんだと。
受け容れれば、いいだけなのに。
頭の中でずっと警鐘が鳴っている。

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[北部学生区][北部裏ラウンジ]
マツタケ [Eno.113] 2025-06-19 18:32:28 No.2222279

慣れれば、馴れれば、それでいいはず。
縋るように聖書を開いた。
こちらも日常にしてしまえば、いいだけ。
ページを捲る手が震えていた。

此処にいたくない。そう思う自分を叱りたくないけれど、
此処で引き返したところで何にもならない事は分かっていた。
少しでも、長く居て、馴れなければ、意味が無い。



「……“恐れることはないイザヤ書 41:10、わたしはあなたと共にいる神。
 たじろぐな、わたしはあなたの神。
 勢いを与えてあなたを助け、わたしの救いの右の手であなたを支える。”……」



口にしてみても震えが止まらないのは、
自分の信心が足りないのだろうか。

主の言葉に縋ろうとしながらも尚、疑っているのだろうか。
不必要な自己嫌悪が湧きそうで、またページを捲る。

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[北部学生区][インターナショナルガーデン]
マツタケ [Eno.113] 2025-06-20 00:01:17 No.2240970

「…………」

日が暮れてからの、涼しい風を感じる。
少しずつ現実に引き戻される感じがして、
ようやく、まともに息が出来る心地がした。

「…………そうだ、」

救いは、自らで齎すものだ。
スマホを閉じて、ポケットにしまう。

聖書を開く。自分を助けてくれる言葉を探す。
自分を救える言葉を探す。

何も無ければ、きっと夜明けの頃まで。

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ふらつく足で、部屋に戻る。
ひとまず大丈夫とは思ったけど、精神を摩耗したのは否めないから
下手したら寝込む気はして、それなら連絡しとかないと、と、
思いは、した、けれど、

……あれ。
今までどうやって、他人を頼ってたんだったか。

すこし、分からなくなって。
ひととの、距離感、というか。そういうの。

……何もしないで結局、布団に潜り込んだ。
暑いはずの気温の中、なんだか、寒くて。
主の愛を確かめるように、身体を丸めていた。