RECORD

Eno.712 茅鳴 ほみの記録

茅鳴直生の日誌 #8

ほみが仲良くしている女子大生の誘いで、
喫茶店が祭りで出すというメニューの試食会に行くことになった。

俺は行きたくなかったが、渋々、だってほみも随分と懐いてるし、
自分が表でも保護者ということになっていて、立場もあるし、
直接礼を言えとほみもうるさいし……。

結論から言えばジェラートは美味かったし、
店主も女子大生もいい人だった。

だけど疲れた。人付き合いは、苦手だ。
相手の顔色を窺って、言葉をひねり出して、
場の空気を読んで、うまいこと乗り切れる自信はない。
人にものを教える立場みたいに、上下関係があるならまだしも。

俺はちゃんと、気を悪くさせないで話せただろうか。
目的だって果たせただろうか。「ほみが世話になってます」
その一言だって、伝えられたかどうか。
大した事じゃないのに、頭の中でぐるぐる回って。

帰り道、並んで歩くほみを見下ろした。
こいつの考えていることはわからない。
だけど、それは……相手が怪奇じゃなくてもわからないことだ。

俺は不安が嫌いだ。
相手の感情を推し量って、不確定なことで振り回される自分が嫌いだ。
バカバカしいとも思う。

ほみにだけは、その不安をあまり感じない。
人の理から外れていると決めつけているからか?
意固地に「先生」と呼ばせているからか?
そばに居すぎているからか?
それこそ、家族になるかのように。

夜中に小腹が空いて、もらったジャムを掬って舐めたら、
あまりに甘くて、考えも飛んでしまった。