RECORD
Eno.1461 篠崎 駿の記録
迷子の少年
北摩市の夕暮れは、人のざわめきが響き合う喧騒に満ちていた。俺は、束都京帝大学の講義を終え、バイクで駅前のロータリーを抜けようとしていた。長めの黒髪をヘアバンドでまとめ、ワークパンツに革ジャン、ブーツの足音が軽快だ。
バイクを加速させ、駅の雑踏を離れようとした瞬間、歩道のベンチで小さな男の子がうずくまっているのが目に入った。
6歳くらい、泣き腫らした目でキョロキョロと周りを見回している。迷子だ。俺はそっと息をつき、バイクを路肩に停めた。ヘルメットを外し、男の子に近づいてしゃがみ、優しく声をかけた。
「ねえ、大丈夫? どうしたの?」
男の子はビクッと体を震わせ、涙声で答えた。
「…ママが…どこか行っちゃった…」
駿は穏やかに微笑み、柔らかい口調で続けた。
「そっか、お母さんとはぐれちゃったんだね。君、名前は? 俺、駿って言うんだ」
「…タケル…」
「タケル君か、いい名前だね。お母さん、きっとすぐ見つけてくれるよ。それまで、俺がここにいるから、安心して」
タケルは不安そうに頷くも、まだ涙目だった。俺はポケットから小さな赤いボールを取り出し、軽く投げて見せた。
「タケル君、ちょっと面白いもの見せてあげるよ。見てて?」
駿は立ち上がり、赤、青、黄色のボールを3つ取り出し、ジャグリングを始めた。ボールが夕陽を浴びてキラキラと舞い、駿の手元で軽やかに動く。時折、派手なパフォーマンスをやると、タケル君がクスクスと笑い出した。
「お兄ちゃん、すごい! どうやってやるの?」
「ハハ、昔、ちょっと練習したんだ。タケル君もやってみる? ほら、こうやって投げるんだよ」
ボールを一つ渡し、タケル君の小さな手に握らせ、優しく投げ方を教えた。
ボールはすぐに地面に落ちたが、タケル君は目を輝かせて何度も挑戦する。俺はそっと手を叩き、穏やかな声で励ました。
「いいよ、タケル君、上手じゃない!」
タケル君が笑顔を見せた瞬間、俺はサムズアップを掲げ柔らかく笑った。
その時、慌てた様子の女性が走ってきた。おそらくタケル君の母親だろう。
「タケル! ああ、よかった、いた!」
タケルは「ママ!」と駆け寄り、母親に抱きつく。女性は涙目で俺を見てきた。
「本当にありがとうございます…! 私、買い物でちょっと目を離してしまって…」
駿は立ち上がり、革ジャンのポケットに手を突っ込み、優しく微笑んだ。
「良かったな、タケル君」
サムズアップを掲げ、ヘルメットを被り直した。母親が「待って、お礼を…!」と声をかけても、俺はそのままバイクのエンジンをかけ、軽く手を振って如月へ戻った。
如月の営業を終え、俺はそのまま自分の部屋へ戻った。革ジャンをハンガーにかけ、部屋の片隅に埃をかぶったギターと恋人・優の写真に目をやる。冷蔵庫から漬物を取り出し、窓の外の風景を見つめた。
タケル君の笑顔が、今日一日を少し特別なものにした。
便利屋として、時には厄介な依頼を引き受ける駿だが、こんな小さな出会いが心を温める。
「誰かの笑顔のために頑張る」「一度関わったことは最後までやる」――自分の信念が、今日も確かにそこにあった。優の好きだったインディーロックのメロディを口ずさみ、俺は窓の外を見つめた。
バイクを加速させ、駅の雑踏を離れようとした瞬間、歩道のベンチで小さな男の子がうずくまっているのが目に入った。
6歳くらい、泣き腫らした目でキョロキョロと周りを見回している。迷子だ。俺はそっと息をつき、バイクを路肩に停めた。ヘルメットを外し、男の子に近づいてしゃがみ、優しく声をかけた。
「ねえ、大丈夫? どうしたの?」
男の子はビクッと体を震わせ、涙声で答えた。
「…ママが…どこか行っちゃった…」
駿は穏やかに微笑み、柔らかい口調で続けた。
「そっか、お母さんとはぐれちゃったんだね。君、名前は? 俺、駿って言うんだ」
「…タケル…」
「タケル君か、いい名前だね。お母さん、きっとすぐ見つけてくれるよ。それまで、俺がここにいるから、安心して」
タケルは不安そうに頷くも、まだ涙目だった。俺はポケットから小さな赤いボールを取り出し、軽く投げて見せた。
「タケル君、ちょっと面白いもの見せてあげるよ。見てて?」
駿は立ち上がり、赤、青、黄色のボールを3つ取り出し、ジャグリングを始めた。ボールが夕陽を浴びてキラキラと舞い、駿の手元で軽やかに動く。時折、派手なパフォーマンスをやると、タケル君がクスクスと笑い出した。
「お兄ちゃん、すごい! どうやってやるの?」
「ハハ、昔、ちょっと練習したんだ。タケル君もやってみる? ほら、こうやって投げるんだよ」
ボールを一つ渡し、タケル君の小さな手に握らせ、優しく投げ方を教えた。
ボールはすぐに地面に落ちたが、タケル君は目を輝かせて何度も挑戦する。俺はそっと手を叩き、穏やかな声で励ました。
「いいよ、タケル君、上手じゃない!」
タケル君が笑顔を見せた瞬間、俺はサムズアップを掲げ柔らかく笑った。
その時、慌てた様子の女性が走ってきた。おそらくタケル君の母親だろう。
「タケル! ああ、よかった、いた!」
タケルは「ママ!」と駆け寄り、母親に抱きつく。女性は涙目で俺を見てきた。
「本当にありがとうございます…! 私、買い物でちょっと目を離してしまって…」
駿は立ち上がり、革ジャンのポケットに手を突っ込み、優しく微笑んだ。
「良かったな、タケル君」
サムズアップを掲げ、ヘルメットを被り直した。母親が「待って、お礼を…!」と声をかけても、俺はそのままバイクのエンジンをかけ、軽く手を振って如月へ戻った。
如月の営業を終え、俺はそのまま自分の部屋へ戻った。革ジャンをハンガーにかけ、部屋の片隅に埃をかぶったギターと恋人・優の写真に目をやる。冷蔵庫から漬物を取り出し、窓の外の風景を見つめた。
タケル君の笑顔が、今日一日を少し特別なものにした。
便利屋として、時には厄介な依頼を引き受ける駿だが、こんな小さな出会いが心を温める。
「誰かの笑顔のために頑張る」「一度関わったことは最後までやる」――自分の信念が、今日も確かにそこにあった。優の好きだったインディーロックのメロディを口ずさみ、俺は窓の外を見つめた。