RECORD
Eno.458 烏丸_椿の記録
沙羅非-Ep.5.1:顔無し・壱
百毫一本。
仙木の枝。
火鼠の皮。
玲瓏の玉。
燕の宝貝。

てっきり彼女は、無理難題を言われたものだと思っていた。
故に、依頼主である医者を目の前にしても、素直に感想を言わずにはいられなかった。
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不躾な言い方。
それに医者は怒るでもなく、嘲るわけでもなく。悪意無く笑って。
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過去を思い出しつつも、それを嫌うように首を振って、彼女から渡された品を一つずつ検める。
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箱から取り出され、状態を確認され、一つ一つ丁寧に梱包される品々。
他愛もない雑談に、彼女は……まあ、いいかと。口を開く。

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医者の手が一度止まる。
当然の反応だろうと、彼女は続けて。

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人の世からは姿をくらました存在、神秘。それらはこの世界で、密に共生関係にある。
"この世界に来る前"から、彼女はそれを知っていた。
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知っているがゆえに。
彼女はこの症状が、神秘の暴走が。
怪異を狩り続けたことによるものではないことを、直感で理解していた。
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否定に、医者は眉を顰め。確認を取り。
彼女はその確認に、間をおいてから……頷いて。


推論。直感。
根拠のない話だが……どこか確信の有るような語調。
医者は品物の確認を済ませて、向き直る。
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不敵な笑み。心得の有るような調子。
彼のその様子に、彼女は満足したように頬を緩めて。

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返事も納品も済んだからと、彼女は席を立つ。
彼もまた、自分の仕事に戻ろうと席を立ち、見送る。
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その前に。
彼女は足を止め。

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仙木の枝。
火鼠の皮。
玲瓏の玉。
燕の宝貝。

「……意外とあるっちゃね、こーいうの」
てっきり彼女は、無理難題を言われたものだと思っていた。
故に、依頼主である医者を目の前にしても、素直に感想を言わずにはいられなかった。
「こちらでは、ですね。名前の割には、探せば見つけられないことも無いものでして」

「じゃあなんで自分で取りに行かんと?」
不躾な言い方。
それに医者は怒るでもなく、嘲るわけでもなく。悪意無く笑って。
「医者が医者としての仕事に専念すると、色々便利なんですよ」
「まあ……私の場合、医者としての仕事に専念しすぎて、表にはいられなくなったのですが」
過去を思い出しつつも、それを嫌うように首を振って、彼女から渡された品を一つずつ検める。
「……慣れていますね」

「何が?」
「この手の素材の採取に、です」

「……」
箱から取り出され、状態を確認され、一つ一つ丁寧に梱包される品々。
他愛もない雑談に、彼女は……まあ、いいかと。口を開く。

「元々そういうのもしちょったかい」
「はあ。以前はどのようなご職業で?」

「怪異狩り」
「……ほお」
医者の手が一度止まる。
当然の反応だろうと、彼女は続けて。

「なんでんかんでん斬るわけじゃなか、少なくともこっちじゃ」
「やり過ぎたら怒られますもんねえ」

「ん」
人の世からは姿をくらました存在、神秘。それらはこの世界で、密に共生関係にある。
"この世界に来る前"から、彼女はそれを知っていた。
「今回の症状も、それが原因で?」

「いや。うちは違うと思う」
知っているがゆえに。
彼女はこの症状が、神秘の暴走が。
怪異を狩り続けたことによるものではないことを、直感で理解していた。
「……聞いても?」
否定に、医者は眉を顰め。確認を取り。
彼女はその確認に、間をおいてから……頷いて。

「……」

「こっちにいる誰かに、呪われた」
推論。直感。
根拠のない話だが……どこか確信の有るような語調。
医者は品物の確認を済ませて、向き直る。
「そうなると。治療も場所を選ばなければなりませんね」

「ん。だから、可能なら。隠れ場所を作って、共有しておきたい」
「……ふふ」
「私は闇医者ですよ? 隠れ家の一つや二つ、用意がありますとも」
不敵な笑み。心得の有るような調子。
彼のその様子に、彼女は満足したように頬を緩めて。

「わかった。なら、その時はまた教えてね」
「かしこまりました。……そろそろ向かわれますか」
返事も納品も済んだからと、彼女は席を立つ。
彼もまた、自分の仕事に戻ろうと席を立ち、見送る。
「どうかくれぐれも、身の安全に気をつけて」

「ん」
その前に。
彼女は足を止め。

「……次の納品、少し間が空くと思う」
「おや。構いませんが……理由をお聞きしても?」

「多分、次の回収」
「うちは襲われる」