RECORD
Eno.279 葦原奏翔の記録
0-2∶少年Kの疵
あれは小学6年生の暑い夏の日に開催されたクラシックコンクールでの出来事だった
参加者、皆が今までの努力によって得た実力とピアノ演奏の技術を以て優勝を目指す
そんなコンクールだ
俺もまた、努力して実力を付け
そのコンクールに出場し優勝を勝ち取った
偉大なピアノ奏者でもあり様々な著名の音楽家を育てた父、葦原奏一郎の息子として恥じる事など何一つもない楽しく全身全霊の演奏だったと自負していたし
審査員の人達も観客も皆が拍手と歓声を送ってくれたのを覚えている
けれど参加者の、特にある少年の悲しみと呼ぶには不自然な表情に
俺は酷く印象に残ったけれど其れの真意を読むことなどその時点では出来なかった
コンクールが終わり
優勝トロフィーを手に家族と帰ろうとした矢先、その参加者が会場の2階から飛び降りたのをガラス越しから見た
その時、此方に向けられた目と合ってその目を見て漸く気付いた
アレは悲しみよりも深い
この世の終わりとでも言うような絶望に満ちた表情だったのだと―――――
後にその参加者の少年は亡くなったと両親から聞いた
病床に伏せていた母親に優勝を贈る約束だったそうだ
両親は俺は悪くないと慰めてくれたけれど
その時、俺はあの少年の絶望に満ちた目が頭に焼き付いて離れられなくなっていた
俺は忘れようとした
学校に行きながらより一層、演奏に没頭し続けた
その時は楽しむ事が出来たし思い出すことも無かったから
そうしてあの目が頭から薄れる迄に1年が経ち、中学1年となった俺は
その年の夏に出場したあのコンクール会場であの少年の父親に襲われた
押し倒された痛みと胸元から伝わる焼け付くような痛み、流れる紅、周囲の悲鳴や叫び、アルコール臭、彼の父親の憎しみの籠もった目と罵倒
何があったのか分からない恐怖で抵抗など出来るはずもなく
警備員が取り押さえるまで動く事が出来ずそのまま気を失ったのか
気付けば病院のベッドの上だった
胸元の疵が痛む中、あの地獄の様な出来事から解放されたと思ったら涙が止まらなかった
皆と同じように努力もして父に教えてもらい実力をつけて優勝した
それだけなのに
何故こんな事になるんだと
俺の何が悪かったのか
なあ、教えてくれよ
誰か―――――
その時、彼の心に1つの悪魔が生まれ、巣食うようになった事にまだ彼は気付いていなかった
参加者、皆が今までの努力によって得た実力とピアノ演奏の技術を以て優勝を目指す
そんなコンクールだ
俺もまた、努力して実力を付け
そのコンクールに出場し優勝を勝ち取った
偉大なピアノ奏者でもあり様々な著名の音楽家を育てた父、葦原奏一郎の息子として恥じる事など何一つもない楽しく全身全霊の演奏だったと自負していたし
審査員の人達も観客も皆が拍手と歓声を送ってくれたのを覚えている
けれど参加者の、特にある少年の悲しみと呼ぶには不自然な表情に
俺は酷く印象に残ったけれど其れの真意を読むことなどその時点では出来なかった
コンクールが終わり
優勝トロフィーを手に家族と帰ろうとした矢先、その参加者が会場の2階から飛び降りたのをガラス越しから見た
その時、此方に向けられた目と合ってその目を見て漸く気付いた
アレは悲しみよりも深い
この世の終わりとでも言うような絶望に満ちた表情だったのだと―――――
後にその参加者の少年は亡くなったと両親から聞いた
病床に伏せていた母親に優勝を贈る約束だったそうだ
両親は俺は悪くないと慰めてくれたけれど
その時、俺はあの少年の絶望に満ちた目が頭に焼き付いて離れられなくなっていた
俺は忘れようとした
学校に行きながらより一層、演奏に没頭し続けた
その時は楽しむ事が出来たし思い出すことも無かったから
そうしてあの目が頭から薄れる迄に1年が経ち、中学1年となった俺は
その年の夏に出場したあのコンクール会場であの少年の父親に襲われた
押し倒された痛みと胸元から伝わる焼け付くような痛み、流れる紅、周囲の悲鳴や叫び、アルコール臭、彼の父親の憎しみの籠もった目と罵倒
何があったのか分からない恐怖で抵抗など出来るはずもなく
警備員が取り押さえるまで動く事が出来ずそのまま気を失ったのか
気付けば病院のベッドの上だった
胸元の疵が痛む中、あの地獄の様な出来事から解放されたと思ったら涙が止まらなかった
皆と同じように努力もして父に教えてもらい実力をつけて優勝した
それだけなのに
何故こんな事になるんだと
俺の何が悪かったのか
なあ、教えてくれよ
誰か―――――
その時、彼の心に1つの悪魔が生まれ、巣食うようになった事にまだ彼は気付いていなかった