RECORD
Vlog(12) 意識の水面下
疲れの混じったため息が出る。
「さっさと帰ろう。」
そう言って、湖から逆の方向へ足を向けた、その時_
「…?気のせいか。」
何かが聞こえた。いや正確には囁いてきた?
気にせず離れようとした。しているはずだが
「……足が、動かない?」
言うことを聞かない。
「おっかあ…おっかあ…。」
其れは、自分じゃない、誰かの記憶。
「痛い…痛いよお…。」
知らない、知らない、誰かの記憶。
「!誰だ!」
囁き声が聞こえた。後ろを振り向き、剣を構えたい。ただ其れさえも出来ない。
「…誰か、そこにいるのか!?」
「まだ、気づかないのか。」
「この毛皮は相当良い値がつく。」
「貴様は何も出来ない。」
「「なあ、陰野のってよ…。」」
「貴様は助けられなかった。」
「どうしてこんなことするの?」
「貴様は逃げてばかりだ。」
「私のこと、見放すの?」
「…っ!違う!」
声を荒げてしまった。
「逃げたのは認める!だが逃げているばかりではない!」
誰もいない、真正面に向けて。
「強くなるために!彼女を守るために!怪奇と戦っているんだ!」
「ほう、そうか。」
今、誰かが鼻で笑ったような気がした。
「何と哀れな。馬鹿で。愚かな人間よ!其れは貴様の罪悪感が生んだエゴだ。」
其の声が脳に響く。そして、何処となく 自分と似ている_
「貴様は弱い。そして脆い!エゴを押し付け、誰かれ構わず優しくするその姿が!愚の骨頂だ!」
「そんなことな………。」
図星だ。彼の言うとおりだ。
「…それの、それの何が悪いんだ。あの時、何も出来なかった俺とは違う。」
手が震えていることに今、気づいた。
「では、そんな貴様に問おう。」
嘲笑混じりに彼は言った。
「もしも貴様の…貴様の大切な仲間が神秘に呑まれ、凶暴化したら殺すのか?」
「…!」
その質問は、とても聞きたくなかった、自分にとってのタブー。
答えられない、 答えられるわけがない!
YESもNOも、どちらも正解ではない。増してや不正解でもない。
「………。」
思考を繰り返す。そして、苦渋の決断。
「…殺す、だろう。」
「嘘だ。貴様は殺せない。」
其れは嘘だ。殺せなど出来やしない。
「貴様は殺さないで救う方法を考える。本心すらも欺き、嘘を吐くとは…何と愚かな。」
あの冷たくて、心が無くなったかのような、嘲笑った声が聞こえる。
「貴様は 面白い 。また会おう…今度は貴様が視認できる、その時だ。」
声が何処かへ去って行った。
ぽちゃん。すると、湖の方から音がした。
まるで湖の方へ戻ったかのようだった。
「…!!!」
また会うのか。こんな野郎に会わないといけないのか_
身体に掛かっていた謎の力が無くなり、足の力が抜け、その場に座莉込んでしまった。
「いや、何だったんだ…本当に誰だアイツ。」
「…よし。帰ろう!」
立ち上がり、尻についた汚れを払い落として…何事もなかったかのように帰って行った。
…結局、アイツが何だったのかはわからなかった。いや本当に誰だよアイツ!!!
裏世界やっぱり怖い所だな。
…。
……。
………。
俺は、殺せない。
殺すことが怖い
いらない優しさが出てしまう。
あの時から、いつも。いつも

「じゃあ、その時が来ないように…。」

「祈っておこう。」










