RECORD

Eno.458 烏丸_椿の記録

沙羅非-Ep.5.4:顔無 ・シ

 五月と六月の境。

 日と日の境。

 生死の境。

「はあっ……はっ……」

 出血は止まりつつある。しかし、傷口は未だ開いたまま。

「ッ──あーもう……」

 壁にもたれかかりながら、記憶にある出入口へと向かう。

「術に、頼り過ぎ」

 ゴミまみれの路地。遠い背後には、斬り棄てられた怪奇。

「うちも、わいも」

 夕闇の中。致命傷になりうる負傷だけを、治療しながら。

「ふ……っ、う」

 おぼろげになる視界。それでも手放さない意識。

「また、迷惑……」
「かけちゃう、ね」


 刀を引きずりながら、脚を引きずりながら。
 ドアノブに体重をかけて。押し込むように。

「……れん、らく」

 残った力で携帯を取り出し。
 扉の先へ、倒れ込むように。

「しない、と」


 ──暴走しているはずの裏渡は、その意に即し。


 どさりと、どこかに倒れて。
 連絡先の、ボタンを押して。