RECORD
Eno.501 白樫 日向の記録
中学一年生での一年間の留学
束都中学校の入学式には、ちゃんと出席した。
新しい制服に袖を通し、席に座り、誰かと深く関わらないまま一日を終えた。
——そしてその夜、母から突然告げられた。
「留学に行きなさい」と。
決定までにかかった時間は、たった一晩。
反論も説明もなく、すべてはもう決まっていた。
行き先は、シンガポールのインターナショナルスクール。寮制。
手配は驚くほどスムーズで英語圏で教育水準が高く、治安や生活水準も申し分ない——そんな理由で、小学校を上がったばかりの俺に与えられた「適切な環境」だったらしい。
初めての海外生活。初めての親元を離れた日常。
不安がなかったわけではない。けれど現地では……まあ、それなりにやれていたと思う。
特別な成功もなければ、深刻な失敗もなかった。
誰かの記憶に残るような存在にはなれなかったが、孤立もせず、波風も立てずに過ごしていた。
ただ、毎週の報告だけは欠かさなかった。
今週、何を学び、何を得たのか。
そして——「ちゃんと勝ち組でいられているか」。
母が求めていたのは、数字やスコアだけじゃない。
その裏にある、自信、成果、そして“勝者の姿勢”だった。
……俺があそこで見ていたのは、初めての国でも、新しい友達でもなくて。
きっと、母の顔だけだったのかもしれない。
新しい制服に袖を通し、席に座り、誰かと深く関わらないまま一日を終えた。
——そしてその夜、母から突然告げられた。
「留学に行きなさい」と。
決定までにかかった時間は、たった一晩。
反論も説明もなく、すべてはもう決まっていた。
行き先は、シンガポールのインターナショナルスクール。寮制。
手配は驚くほどスムーズで英語圏で教育水準が高く、治安や生活水準も申し分ない——そんな理由で、小学校を上がったばかりの俺に与えられた「適切な環境」だったらしい。
初めての海外生活。初めての親元を離れた日常。
不安がなかったわけではない。けれど現地では……まあ、それなりにやれていたと思う。
特別な成功もなければ、深刻な失敗もなかった。
誰かの記憶に残るような存在にはなれなかったが、孤立もせず、波風も立てずに過ごしていた。
ただ、毎週の報告だけは欠かさなかった。
今週、何を学び、何を得たのか。
そして——「ちゃんと勝ち組でいられているか」。
母が求めていたのは、数字やスコアだけじゃない。
その裏にある、自信、成果、そして“勝者の姿勢”だった。
……俺があそこで見ていたのは、初めての国でも、新しい友達でもなくて。
きっと、母の顔だけだったのかもしれない。