RECORD
Eno.504 沸田 悠次郎の記録
こちらにきてはいけません
こちらにはいってはいけません
こちらをしってはいけません
もどれなくなるまえに。
◇
例えば表世界において暮らすにあたって、クラスが割り振られるのは当然の話である。
なぜなら、学生生活を送っているからだった。
学生生活に紛れ込んで生活を送るのが当然な話である。
そういう話であるのだから、それ以外はあり得ないのだった。
手続きは組織によって滞りなく行われているのであろう。
季節外れではない転校生だった。
おおよそ4月あたりからいたのだろう。
沸田悠次郎はそうしていたのだろう。
沸田悠次郎には転校前の学校の記憶があるのだが、これが聞けば聞くほど不明瞭で無茶苦茶な筋書きであることは保護した際の聞き取り調査が示している。
それがめちゃくちゃであるという自覚が本人にはないのだから、転校前の学校のことを表世界であまり話すなとは口止めすることであった。
当然実家である銭湯の事もそれに含まれる。
が、しかし、それは否定ができないのだと沸田悠次郎は話すのだった。
場所は秘密にする。
今はやってないことにする。
それで乗り切るようにする。
とは約束するところだった。
彼の実家は銭湯であると、表でも確かにそのようだった。
沸田悠次郎は人間だと自覚を持っているが、その実怪奇であった。
が、裏に人間が立ち入ってはいけないことは理解している。
妙なのは、それを組織が説明すれば、人間と思い込む割に難色を示さなかったことか。
当然である。
それだけは最初から理解するようにしていたらしい。
人間と思い込んでいるのなら、表に世界があることも受け入れるのに時間がかかりそうなものだったが。
それら常識を知り、そうと理解し、飲み込むまでがやたらと早かった。
あんまりにも飲み込みが早いから、まるで知ってるのに、知らないふりをしてるみたいだった。
とは、聞き取った人間のざっくりとした所感だった。
でも、彼は本当に知らないのだった。
本当に、知らないのだった。
沸田悠次郎は怪奇である。
◇
──全てに手が届くと思うのは大間違いである。
全てに手が届くと思うのは大間違いだろう?
でも所属したクラスのクラスメイトぐらいには手が届くといいなと常々思っているのだった。
“そういうご縁”だった。
偶然性。ランダム性。掴み取った糸を知らず。そこに意図はなく。
必然はなし。
アザーサイドコロニストの人たちは親切で、要約すれば、あちら側の世界から来た人がここに長居するのはまずいというはなしだった。
不安定な空間だった。
未知に満ちていた。
迷ったままだとあっち側から消えるようだった。
こちらで動けば動くほど、神秘というものを纏うようだった。
纏すぎると、人でなくなるという。
怪奇に近しくなるという。
化け物。
それはよろしくないことだと即座理解した。
理解力は高い方だった。
クラスメイトを返さなければ。
守るほどの実力はない。
力もない。
あいにく、纏を振って敵を殴り倒すことしかできない。
怪奇だなんだ言われたが、それ以外できまい。
あとは口先だけだった。
だから戦場で見かけたクラスメイトには早く帰るよう勧めたし。
拠点で見かけたクラスメイトにも、早く帰るよう勧めるのだった。
武器を持つのはよろしくない。
それしかできまい。
それしかできまい。
…おそらく、怪奇のクラスメイトもいるようだったが。
でも、己れとは違うのだった。
姿、形、クラスの時のそれではなかった。
早く帰らなくても良いのだと、思った。
──実家にクラスメイトが顔を出していた。
やあ、偽物だと思った。
そんな都合のいい話はなかった。
襲う怪奇がいるところでも思ったが。
それまで一度も、なかった。
別に長居さえしなければ良いのだけども。
しなければ、仕方のないことだろう。
表と裏、ゆらぎというものがあるらしい。
簡単な話ではないらしい。
故、表に協力を求めるのも仕方がない。
それほど緊急性を帯びているのだろう。
仕方ない、
子供が。
緊急性がある
どうにか、
──なんの話だ?
こちら側は危ないのだった。
だから、自分は怪奇だと口にした。
やあ、隠してるわけではない。
普通に当然に口にする。
怪奇であると。
いうタイミングはあんまりなかったけど。
恐れているべきだった。
必要最低限でいて欲しいと己れは思うのだった。
誰だ?
己れは人間である。
が、怪奇であると言われてなんの話だ?いるのだから、表の人からしたら怪奇なのであろう。
全く人間扱いしないとは失礼な話であるが、それはあくまで判定だれがはなしている?する側に対する憤りである。
表と呼ばれる世界が正オレはであるのならば、そこから見て裏側の世界は負なんだろうよ。
だからあっち側これは誰だ?の定めた基準に則って話すのが正解だった。
己れは彼ら知らん、に対して怪奇だった。
警戒をすべきである。何をするかわからんぞ。
恐れを抱くべきだぞ。何をするかわからんぞ。
お前の身はお前で守れ。
全部に手は届くまい。
かえるように。かえるように。
かえるように。かえるように。
へんなちからをえないように。
へんなちからにのまれないように。
たのむからかえってくれ。
かえれ。
かえれ。
知らなかったことがわかって、それがそれまで危険だと思っていた範疇の存在であるのなら、それで理解を止めればよかったのだろう。
頭を硬くしろ。
思考を鈍らせろ。
逃げろ。
それまでで終わり。
仕事はあるし小遣いももらえるのだろ。
あとは、最低限。
──が、できないクラスメイトなんだろう。
あれが真に誠実であることの態度なんだろう。
曇りなく、自らの眼で事実を捉える。
捉えた事実を、自分で考えて咀嚼する。
持った疑問をそのままにしない。
それが短い時間で解決できない思考や疑問であっても。
失礼なことしてたら申し訳なくてやってられんから。
真面目だなあ、といった。
それしかいえなかった自分はひどく不誠実だった。
その三文字で集約するには。
曲がることはなく、まっすぐな思考だったから。
正しく正直者だった。
目を逸らさない態度に負担を持つほどに。
人と向き合って声をかわせる、奴なんだろう。
いいところで、悪いところだった。
向き合いすぎてパンクしないといいが。
そんな不安を持つ程度に。
──故に、申し訳がなかった。
不誠実だった。
何もできない。
無事に返さねばならなかった。
あちらがわに。
あちら側に。
何もできない。
故に手を叩くようなことばかりしていた。
はたいていた。
おそれろと。
何もできない。
とは、笑い草。
──なんの話だ?
◇

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──怪奇に襲わせはしないからさ。
第5話:表裏についての所感
こちらにきてはいけません
こちらにはいってはいけません
こちらをしってはいけません
もどれなくなるまえに。
◇
例えば表世界において暮らすにあたって、クラスが割り振られるのは当然の話である。
なぜなら、学生生活を送っているからだった。
学生生活に紛れ込んで生活を送るのが当然な話である。
そういう話であるのだから、それ以外はあり得ないのだった。
手続きは組織によって滞りなく行われているのであろう。
季節外れではない転校生だった。
おおよそ4月あたりからいたのだろう。
沸田悠次郎はそうしていたのだろう。
沸田悠次郎には転校前の学校の記憶があるのだが、これが聞けば聞くほど不明瞭で無茶苦茶な筋書きであることは保護した際の聞き取り調査が示している。
それがめちゃくちゃであるという自覚が本人にはないのだから、転校前の学校のことを表世界であまり話すなとは口止めすることであった。
当然実家である銭湯の事もそれに含まれる。
が、しかし、それは否定ができないのだと沸田悠次郎は話すのだった。
場所は秘密にする。
今はやってないことにする。
それで乗り切るようにする。
とは約束するところだった。
彼の実家は銭湯であると、表でも確かにそのようだった。
沸田悠次郎は人間だと自覚を持っているが、その実怪奇であった。
が、裏に人間が立ち入ってはいけないことは理解している。
妙なのは、それを組織が説明すれば、人間と思い込む割に難色を示さなかったことか。
当然である。
それだけは最初から理解するようにしていたらしい。
人間と思い込んでいるのなら、表に世界があることも受け入れるのに時間がかかりそうなものだったが。
それら常識を知り、そうと理解し、飲み込むまでがやたらと早かった。
あんまりにも飲み込みが早いから、まるで知ってるのに、知らないふりをしてるみたいだった。
とは、聞き取った人間のざっくりとした所感だった。
でも、彼は本当に知らないのだった。
本当に、知らないのだった。
沸田悠次郎は怪奇である。
◇
──全てに手が届くと思うのは大間違いである。
全てに手が届くと思うのは大間違いだろう?
でも所属したクラスのクラスメイトぐらいには手が届くといいなと常々思っているのだった。
“そういうご縁”だった。
偶然性。ランダム性。掴み取った糸を知らず。そこに意図はなく。
必然はなし。
アザーサイドコロニストの人たちは親切で、要約すれば、あちら側の世界から来た人がここに長居するのはまずいというはなしだった。
不安定な空間だった。
未知に満ちていた。
迷ったままだとあっち側から消えるようだった。
こちらで動けば動くほど、神秘というものを纏うようだった。
纏すぎると、人でなくなるという。
怪奇に近しくなるという。
化け物。
それはよろしくないことだと即座理解した。
理解力は高い方だった。
クラスメイトを返さなければ。
守るほどの実力はない。
力もない。
あいにく、纏を振って敵を殴り倒すことしかできない。
怪奇だなんだ言われたが、それ以外できまい。
あとは口先だけだった。
だから戦場で見かけたクラスメイトには早く帰るよう勧めたし。
拠点で見かけたクラスメイトにも、早く帰るよう勧めるのだった。
武器を持つのはよろしくない。
それしかできまい。
それしかできまい。
…おそらく、怪奇のクラスメイトもいるようだったが。
でも、己れとは違うのだった。
姿、形、クラスの時のそれではなかった。
早く帰らなくても良いのだと、思った。
──実家にクラスメイトが顔を出していた。
やあ、偽物だと思った。
そんな都合のいい話はなかった。
襲う怪奇がいるところでも思ったが。
それまで一度も、なかった。
別に長居さえしなければ良いのだけども。
しなければ、仕方のないことだろう。
表と裏、ゆらぎというものがあるらしい。
簡単な話ではないらしい。
故、表に協力を求めるのも仕方がない。
それほど緊急性を帯びているのだろう。
仕方ない、
子供が。
緊急性がある
どうにか、
──なんの話だ?
こちら側は危ないのだった。
だから、自分は怪奇だと口にした。
やあ、隠してるわけではない。
普通に当然に口にする。
怪奇であると。
いうタイミングはあんまりなかったけど。
恐れているべきだった。
必要最低限でいて欲しいと己れは思うのだった。
誰だ?
己れは人間である。
が、怪奇であると言われてなんの話だ?いるのだから、表の人からしたら怪奇なのであろう。
全く人間扱いしないとは失礼な話であるが、それはあくまで判定だれがはなしている?する側に対する憤りである。
表と呼ばれる世界が正オレはであるのならば、そこから見て裏側の世界は負なんだろうよ。
だからあっち側これは誰だ?の定めた基準に則って話すのが正解だった。
己れは彼ら知らん、に対して怪奇だった。
警戒をすべきである。何をするかわからんぞ。
恐れを抱くべきだぞ。何をするかわからんぞ。
お前の身はお前で守れ。
全部に手は届くまい。
▼
かえるように。かえるように。
へんなちからをえないように。
へんなちからにのまれないように。
たのむからかえってくれ。
かえれ。
かえれ。
知らなかったことがわかって、それがそれまで危険だと思っていた範疇の存在であるのなら、それで理解を止めればよかったのだろう。
頭を硬くしろ。
思考を鈍らせろ。
逃げろ。
それまでで終わり。
仕事はあるし小遣いももらえるのだろ。
あとは、最低限。
──が、できないクラスメイトなんだろう。
あれが真に誠実であることの態度なんだろう。
曇りなく、自らの眼で事実を捉える。
捉えた事実を、自分で考えて咀嚼する。
持った疑問をそのままにしない。
それが短い時間で解決できない思考や疑問であっても。
失礼なことしてたら申し訳なくてやってられんから。
真面目だなあ、といった。
それしかいえなかった自分はひどく不誠実だった。
その三文字で集約するには。
曲がることはなく、まっすぐな思考だったから。
正しく正直者だった。
目を逸らさない態度に負担を持つほどに。
人と向き合って声をかわせる、奴なんだろう。
いいところで、悪いところだった。
向き合いすぎてパンクしないといいが。
そんな不安を持つ程度に。
──故に、申し訳がなかった。
不誠実だった。
何もできない。
無事に返さねばならなかった。
あちらがわに。
あちら側に。
何もできない。
故に手を叩くようなことばかりしていた。
はたいていた。
おそれろと。
何もできない。
とは、笑い草。
──なんの話だ?
◇
▼番頭日報

「クラスメイトが来てくれた!」
「いやまあ 問題があるのは承知の上だが 表の人間があまりここにいるのは良くない」
「が 来てもらえるのは、とても嬉しいことだなッ」
「こちら側で、クラスメイトに、オレの自慢の銭湯が見せられる」
「それがどうしようもなく、嬉しいのだッ」
「だからまた裏に来たついでに寄って欲しいものだなッ」
──怪奇に襲わせはしないからさ。