RECORD

Eno.372 橘ネムの記録

【追想】哭く鋼1

轟音が鳴り響く
耳鳴りが止まらなくなっていくらほどが経っただろうか。
戦場で俺は、撃つ、撃つ、撃つ。
いくら撃っても敵はいなくならない。戦いは終わらない。

泥の中を駆け回る。
共に走る仲間が一人、また一人倒れていく。
助けに入る事はできない。故に振り向きもせずに駆け抜ける。
やられた仲間の代わりに無人兵器たちを倒してゆく。一体、また一体。
周囲で聞こえる爆発音に耳をやられながら、泥にまみれ重い体を動かして。
戦う、戦う、戦う、戦う。

いつまで戦えばいい?

戦況は拮抗状態に陥っていた。
押せど進まぬ塹壕戦。けが人死傷者ばかりが増える実情。
兵たちは気力を殆ど使い果たしていた。
それでもこの戦争に勝利しなければ。

戦争から早2年が過ぎようとしていた。
終わる気配はない。
いくつもの戦地を巡り、見るのは凄惨な現実ばかりだった。
それでも戦いを続けるのは、この戦争に勝たなければ未来はないこと――――

友が次の日には死ぬような戦線で。
自分の身すら危うい中で。
それでも勝たなければならない。
この戦いに負ければ、侵略の手は止まらない。
日常は帰ってこない。
愛する娘と妻の元へ、帰るためにも。