RECORD

Eno.103 長谷場 成の記録

黄金色の誕生日

 持ち帰ったものをひとつひとつ紙袋から取り出し、テーブルに並べる。

 ちょっと良い羊羹。ビールと度数低めの酎ハイとおつまみ。手裏剣型デニッシュをはじめとした、たくさんの忍者にちなんだ形のパン。手裏剣型クッキーと紅茶。金や銀の絵の具で和風の模様が描かれた手裏剣投げの的──は部室に設置してあるので、その写真。そして、洋酒の香りがする、クリームとフルーツがぎっしり乗ったホールケーキ。

「……今日は嬉しかったな」

 椅子に座り、テーブルの上のものをつつきながら愛おしそうに眺める。

 思えばここ数年、誕生日はいつもその時の彼女と、北摩テクノポリスに来る前は祖父母に祝われるくらい。
 もちろん学校で友人たちから祝ってもらうことはあるが、今日みたいにたくさんの人達に囲まれてプレゼントを贈られお祝いをしてもらうことはなかった。

 本当に良い仲間たちだな、と思う。
 部室はとても居心地が良く、今では一番の憩いの場だ。

 最初は嫌なことを忘れるために無理やり明るく振る舞っていたものだが、すぐにそんな必要はなくなった。
 意識的に盛り上げようとはするが、いつも心から楽しいと思っている。

 立ち上がり、お酒とケーキと羊羹を冷蔵庫にしまった。
 今すぐ飲んで食べてしたいところだが、お酒は冷やしてから飲んだ方が良いだろう。

 ──もう、20歳になったのか。

 冷蔵庫の中に並べた缶ビールを見て、そう実感した。
 あれから、ちょうど10年。
 やっぱり、本気を出さなくても楽しく生きることは可能だ。
 あんなに辛く悲しい思いをするぐらいなら、本気を出して得られるものなんていらない。
 これからも、本気で打ち込まず、本気で愛さず、半分眠ったままでいい。

 それでもこんなに幸せなのだから。