RECORD
Eno.340 月待 よすがの記録
正義とは、古今東西あらゆる場所で翳されるものにも関わらず、その定義は場所に寄って酷くブレるものらしい。
例えば我が国日本の正義は、弱きを助けるものであることが多い。
マジョリティに食い殺されるはずだった少数の声を聞き、対話を以て決めるもの。
そのためには邪道をも厭わず利己的ですらあるはずのもの。
例えば西欧の正義は、公平かつ公正な秩序である。
法律に即し、時に冷たくすべてのものを平等に裁きルールを守るもの。
そのためには法に、神に全幅の信頼を置き社会の下僕となるもの。
かつて正義感に溢れた子供が、怪奇と契約し悪者を断罪する力を得た。
子供が悪と定めればその者には不幸が訪れる。……そんなオカルトがあったりする。
この場合の道徳とは、子供に罪が在るかという話だろう。
道徳を鑑みて振りかざした正義の責任はだれが取るのだろう。
自分であるのか、法律であるのか。
そうして表記の移ろってゆく正義というものに神秘性を見出すのは……まあ、難しいことではない。
振るわれ方の分からないそれに畏怖し、救うかもしれないそれを信仰すれば神秘が宿るはず。
……実際、そうして力を手に入れた人間も少なくないのではないだろうか。
誰かを救うために説明できない力を振るうことは、この現代であり得ないことでもないだろう。
まあ、この場合の「正義」は僕にとって別に暴けなくてもいいんだけど。
彼の言う正義がどんなものかは、何だっていい。定義は明確にしておかないと危ないけどね。
僕が見たいのは君の神秘の方。
隠して、死によって口止めされるほどの秘術の方。
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……君はどう受け取ったかは分からないけれど。僕は本当に、その言葉がやさしいと思ったんだ。
考えて考えた末に出した結論。僕自身のことも、暴かれる側のことも考えて出した、判決。
それを「自分の正義は」受け入れられないと言えるのは、優しいことだ。
だからこそ僕は意地が悪い。普段はそうして切り上げる質問を、続けてしまった。
君がどれだけ悩んで出した結論か知っているのに。

神秘の命と己の命を天秤にかけた、命題。
僕はそうしなければ生きていけない。自分の知れること、楽しいこと、それを常に摂取できなきゃ気が狂いそう。
神秘以外に触れられないのだから、神秘を知るしかない。
無理矢理暴いて、紐解いて、究明して、例えそれが誰かの安寧を脅かすとしても――
"「否定しよう」"
"「そして俺が力になって別の道を探そう。それがダメな時には…」"
"「せめて俺が引導を渡す」"
………………。
そうだ。
そうなんだよ。
これは、肯定されるべきではない悪徳。
誰かを不幸にして、殺して、死体の上に成り立つ興味なんて死んでしまった方が良い。
けれども君は、手を差し伸べた。
それ以外の別の道。僕が人として生きていくための、それ以外の何か。
そうして考えて、努力して、その果てに月待よすがが死ぬのなら。

そう答えた時の君の顔を、僕は窺い知ることは出来ないけれど。
きっと楽し気ではないことくらいは分かる。分かった。
「そのときは俺の神秘で君を殺すと約束しよう。辛くなったとき、ダメな時。どんな時だろうと…」
「俺の神秘の全てを見せて助けよう」
……ごめんね。僕は酷い人間なんだ。
利用することでしか人と関われない。けれど、ずっとずっと願ってた。祈ってた。
あの時の後悔を殺すのは、"生きててよかった"っていう実感だから。
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自分が神秘を暴いて、他人を害するかもしれない時。
どうしようもなく辛くて、死んでしまいそうな時。
そんな存在の息の根を止めてくれるなら、本当に救われる。
ねえ、僕の正義のヒーロー。
もっともっと僕のことを考えていてね。
僕の好きな食べ物は君が一番よく知っているはず。
辛いものが好きなんだ。そうしていつか、研究してくれたように。
僕の一番望んでいるものも、君はどうしてか知っていた。
自分が人として生きていられなくなった時の。
それが他者の幸せを奪うなら、幕を下ろす名前は「正義」だろう。
"「君が耐えれなくなったとき。俺の正義に反したとき」"
"「よすがを必ず俺の神秘で殺す」"
うん、明日もがんばろう。
正義
正義とは、古今東西あらゆる場所で翳されるものにも関わらず、その定義は場所に寄って酷くブレるものらしい。
例えば我が国日本の正義は、弱きを助けるものであることが多い。
マジョリティに食い殺されるはずだった少数の声を聞き、対話を以て決めるもの。
そのためには邪道をも厭わず利己的ですらあるはずのもの。
例えば西欧の正義は、公平かつ公正な秩序である。
法律に即し、時に冷たくすべてのものを平等に裁きルールを守るもの。
そのためには法に、神に全幅の信頼を置き社会の下僕となるもの。
かつて正義感に溢れた子供が、怪奇と契約し悪者を断罪する力を得た。
子供が悪と定めればその者には不幸が訪れる。……そんなオカルトがあったりする。
この場合の道徳とは、子供に罪が在るかという話だろう。
道徳を鑑みて振りかざした正義の責任はだれが取るのだろう。
自分であるのか、法律であるのか。
そうして表記の移ろってゆく正義というものに神秘性を見出すのは……まあ、難しいことではない。
振るわれ方の分からないそれに畏怖し、救うかもしれないそれを信仰すれば神秘が宿るはず。
……実際、そうして力を手に入れた人間も少なくないのではないだろうか。
誰かを救うために説明できない力を振るうことは、この現代であり得ないことでもないだろう。
まあ、この場合の「正義」は僕にとって別に暴けなくてもいいんだけど。
彼の言う正義がどんなものかは、何だっていい。定義は明確にしておかないと危ないけどね。
僕が見たいのは君の神秘の方。
隠して、死によって口止めされるほどの秘術の方。
"大好きな神秘というものを知りたい。暴きたい。
たとえそれが死んでしまうものだとしても、好奇心が止められない。"
A1. 別にいいんじゃないかな?周りが何て言うかは知らないけど。
A2. ……そうなってしまっても、いいのかも。
A3. 酷く、残虐なことだとは思う。
……君はどう受け取ったかは分からないけれど。僕は本当に、その言葉がやさしいと思ったんだ。
考えて考えた末に出した結論。僕自身のことも、暴かれる側のことも考えて出した、判決。
それを「自分の正義は」受け入れられないと言えるのは、優しいことだ。
だからこそ僕は意地が悪い。普段はそうして切り上げる質問を、続けてしまった。
君がどれだけ悩んで出した結論か知っているのに。

「もしも他人を殺して、神秘を暴いて……そうしなければ僕が死んでしまうとしたら」
「……君はどうする?同じように僕を否定する?」
神秘の命と己の命を天秤にかけた、命題。
僕はそうしなければ生きていけない。自分の知れること、楽しいこと、それを常に摂取できなきゃ気が狂いそう。
神秘以外に触れられないのだから、神秘を知るしかない。
無理矢理暴いて、紐解いて、究明して、例えそれが誰かの安寧を脅かすとしても――
"「否定しよう」"
"「そして俺が力になって別の道を探そう。それがダメな時には…」"
"「せめて俺が引導を渡す」"
………………。
そうだ。
そうなんだよ。
これは、肯定されるべきではない悪徳。
誰かを不幸にして、殺して、死体の上に成り立つ興味なんて死んでしまった方が良い。
けれども君は、手を差し伸べた。
それ以外の別の道。僕が人として生きていくための、それ以外の何か。
そうして考えて、努力して、その果てに月待よすがが死ぬのなら。

「じゃあさ、……ダメな時には、君の神秘で殺してくれ」
「どうしようもなく、僕が生きられない時には君の神秘で死にたい」
そう答えた時の君の顔を、僕は窺い知ることは出来ないけれど。
きっと楽し気ではないことくらいは分かる。分かった。
「そのときは俺の神秘で君を殺すと約束しよう。辛くなったとき、ダメな時。どんな時だろうと…」
「俺の神秘の全てを見せて助けよう」
……ごめんね。僕は酷い人間なんだ。
利用することでしか人と関われない。けれど、ずっとずっと願ってた。祈ってた。
あの時の後悔を殺すのは、"生きててよかった"っていう実感だから。
"もしも死ぬ時は、神秘に脅かされた時だって思ってた。"
"ずっとずっと、そう思ってたんだ"
"――君は僕の夢を叶えてくれるんだ"
自分が神秘を暴いて、他人を害するかもしれない時。
どうしようもなく辛くて、死んでしまいそうな時。
そんな存在の息の根を止めてくれるなら、本当に救われる。
ねえ、僕の正義のヒーロー。
もっともっと僕のことを考えていてね。
僕の好きな食べ物は君が一番よく知っているはず。
辛いものが好きなんだ。そうしていつか、研究してくれたように。
僕の一番望んでいるものも、君はどうしてか知っていた。
自分が人として生きていられなくなった時の。
それが他者の幸せを奪うなら、幕を下ろす名前は「正義」だろう。
"「君が耐えれなくなったとき。俺の正義に反したとき」"
"「よすがを必ず俺の神秘で殺す」"
うん、明日もがんばろう。