RECORD

Eno.562 月本 汐俐の記録

深い、深い、海の底。

深い、深い、海の底。
小さな少女は、泣いてしました。



保育所で大人しくて利口な子と言われていた少女は、周りの人が怖くて近寄りたくないだけでした。
周りの人が悪い子とは思ってはいません。
ただ、知らなくて、怖かった。
ただ、其れだけなのです。


今から12年前のお話。


国際貴女学院の初等部に通う様になっても、少女は変わりませんでした。
――否、変わる理由がありませんでした。
周りの子とあまり話すことも無く、本を読んでばかりでした。
――否、本を読むしか、休み時間にやることがなかったのでした。

其れでも、本を読むことは楽しいものでした。
知らない世界、知らない生き物、知らない冒険。
本の世界には、少女に知ることと、想像することを教えてくれました。
――其れでも、誰かと仲良くすることは、怖くて踏み出せませんでした。


深い、深い、少女の涙の海の底。
小さな少女は、ずっと泣いてしました。