RECORD

Eno.453 羽姜 戀寅の記録

映像記録:車載カメラ(20██/09/██/18:01:00~)

神秘管理局調査課保管。以下は映像記録を文章に起こしたもの。



██県██トンネルを進行中の普通自動車。(車種・ナンバープレートは別紙記載)
前方に普通自動車が3台以上確認できる。後方に車両無し。
乗員は4名。
うち、運転手は成人男性。助手席に乗員なし。
後部座席に成人女性1名、男子乳幼児1名、女子児童1名。

映像内のトンネル内部は、比較検証の結果、異常無し。
映像より推定できる空間神秘率は0%。



2分16秒後、トンネル終端に到達。
トンネル内外の明暗差により、一瞬映像が不明瞭になる。
フレーム検証により、この時点で境界面と接触したと推定される。

映像内の大気色は赤褐色。天頂に向かって、鮮やかな赤。
乗員は時間帯から夕焼けと判断。

道路状態は劣悪。
アスファルトにひび割れ・剥がれが確認でき、ガードレールはひどく錆び付いている。
また、近傍に植樹されている複数の樹木により凹凸がある。
該当する区画は、映像の撮影される2年前に修繕工事が完了しており、植樹は行われていない。
映像より推定できる空間神秘率は50%。



車両は道なりに進行する。
4分30秒後、土の露出した路面に到達。
異常を察知した運転者により、路肩へ車両が停車。
前方を走行し続けていた車両が、映像内から消失。

運転手の男性が、車載カーナビゲーションシステムとスマートフォンにより位置を検証している様子が、音声で確認できる。
女性との会話により、道を引き返す方針となり、車両は回頭。██トンネルへ向けて移動を開始する。

以後、道路はトンネルに到達できず、劣化した道路上を進行する映像が10分続く。
10分16秒後、女性と女子児童がトンネル未到達の異常について言及。男性が同意。

車両速度が上昇。
男性が状況への焦りから無意識に行っているものと推測される。

19分40秒後、車両は土の露出した路面に到達。
映像中、道路に分岐は確認できず。
車両が一時停止。乗員3名が異常について言及。乳幼児が泣き声を洩らし始める。

乗員は分岐路を見落としたと判断し、再度車両を回頭。時速20km前後で進行を再開する。
以後、車両はアスファルトの路面へ到達できず。未舗装の道路を走行し続ける。



30分12秒後、車両が停止。
映像内の路上に兎形目と推測される小動物が確認される。

小動物は車両を凝視。
運転手の男性は、車両のクラクションを使用。小動物は微動だにせず。
男性は、車両を間近まで進行させたのち、降車して路上から移動させる方針を発言する。

車両が小動物へ接近。
乗員の発言は無し。
映像内の小動物の体長は、車両が近接した時点で、およそ3mと推定。

車両後部に同種と見られる小動物が複数出現。映像内では、いずれも40cm以下。
乗員らの発言から、車両周囲に同様に小動物が出現しており、車両が包囲されていることが推測される。

車両を包囲する小動物の群れは、いずれも一回以上のスタンピング(地面を蹴る、兎形目の習性)を行っている。
車両前方の3m個体がスタンピングを行ったのち、車両前部に乗り出し、ボンネットを前足で掻き始める。
また、フロントガラスに鼻先を押し付けている。
車両は激しく振動している。

映像音声に、カリカリ音が入る。
小動物の群れが車両を齧り始めていることを乗員が言及。
破裂音が一回。右後部タイヤが破損。

事態を認識した運転手の男性は、車両を急発進させる。
車両前部に乗り上げた状態の3m個体は、そのまま車両に押される形となる。
車両は加速と急減速、左右への蛇行を繰り返し、3m個体を振り落とそうとする。

29秒後、運転手の死角だったと考えられる樹木に、3m個体ごと車両が衝突。
3m個体が樹木と車両に挟まれている状態より離脱するために体動。
車両が横転する。
衝撃で車載カメラが車内右を向き、小動物の群れが車両周囲を再度包囲していることが確認できる。

車両が軋む音声。
映像内のドアガラスにひびが入る。
運転手男性が後部座席へ這い、後部の乗員3名の安否を確認しようとする。

ドアガラスが割れ、小動物の群れが車内へ侵入。乗員の悲鳴の音声。
小動物が車内を辺り構わず齧り散らし、車載カメラに接近する。

映像終了。