RECORD

Eno.616 桟田 稲妻の記録

いつかの記憶

━━━━

━━━━━━━━。

...夢を見る。

遠い過去のような...遥か先の未来のような...。
もしくは別の世界のような...。

その夢の中では自分は探偵事務所を営んでいた。

知らないはずの街並み。
見たこともないはずの部屋。
会ったこともないはずの友人。

とても新鮮な感覚ではあったが...
どこか懐かしい気持ちにもなった。

ふと辺りが暗転する。
暗闇の中、明かりを求めて後ろを振り返る。

そこには黄色いレインコートに身を包んだ少女が居た。
そして少女は何かを訴えるような表情でこちらを見つめている。

その少女にそっと近づき、話しかけようとした...
しかし、自分の喉から声が発せられることはない。

ふいに少女がこちらに手を伸ばした。
何故かは分からない...しかし、その手を取らなければ...

   "助けなければ"

本能的にそう感じ、手を伸ばす。


その瞬間何かに手をはじかれる。

最初こそなにかは分からなかったが、
その形は徐々に鮮明になる。

触手だ。

タコのような大きな触手がウネウネとうなっている。

その触手は徐々に数を増していき、少女を覆いつくしていく。
少女は微動だにせず、ただその運命を受け入れるかのように黙っている。

   "助けなければ"

再びその思考が脳裏によぎる。

その声に押されるようにもう一度手を伸ばす。

   "助けなければ"

どこの誰かもわからないのに?

   "助けなければ"

自分が死んでしまうかもしれないのに?

"━━あぁ。それでも...。
少女を、何の罪もないあの娘を救えるのなら...。"


━━。

━━━━。

目が覚める。

いつもの部屋。
なんの変哲もない朝。

ふと、近くにあった鏡を見る。

そこには涙を流す自分自身が映し出されている。

「.........?」



不思議な夢を見た。

きっとこの夢は忘れることは出来ないのだろう。

だが不思議と怖くはない。
むしろ、忘れてしまう方が怖いと、そう感じる。

「......。」


「(深いため息)」


「さて...と。今日はどんな一日になるかな...!」