RECORD

Eno.358 青柳瀬 一桜の記録

Vitreous Anamnēsis



―人は、どこかにある知識や記憶を、ふとした時に思い出す。
それは、意識的であれ、無意識であれ―



では、それはどこまで残っていて、どこから消えてしまうのでしょう。
この体の中の、どのくらいが人間であれば、それを元に戻せるのでしょうか。


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「あの方は、『怪奇を斬ってる方が生きてる実感があるって』
『怪奇と変わらないから、もう自分に構うな』って」

それは、神秘の含有率の違いなんでしょうか。
――――きっとそれは私の方が高いと思う――――
だから、表の世界で楽しく過ごせと言います。
――――そうですね、私も、同じことを言いました――――

向こうの世界に帰って、って言ったら、お互い引かなくて。


迷惑をかけることをしなければ、好きなように動いていいと言っていました。
薄々気付いているのでしょうか。

私が
諦めるようなことばかり言うあなたが、向こうの世界で過ごせるようになることを。

何も情報をもらっているわけではなくとも。そんなことを一度も伝えていなくても。
手掛かりを探し続けていることを。

だって、伝えても、いつも
お互いに『表の世界へ帰れ』って、言い合ってしまいます。


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表の世界に、どうして帰ってほしいのか
私も少し考えました。

私は最初、ほどなくして溶けて消えるであろう私の意識が
少しでも長い時間留まれれば、良いと思っていました。

けれど、いろんな方が、怪奇や神秘の影響を変えるために、この世界で動いています。
私にも、どんなものがあれば、この雪の女神の浸食を止められるのか、わかりました。


氷漬けの残留思念

それは、氷の女神の希望を叶えること
彼女に……神話では、愛が壊れて崩れ落ちてしまった彼女の心に
永遠の花Pua Mae ʻOleを届けること。


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いうこときかなくて
無茶をして
叱られてもやめなくて
拗ねたり喧嘩したり

そんなわたしを

心配してくれてるって
大事にしてくれるって
何かあると、いつも来てくれるって

いつも、そのことから、目を背けようとしていました。


受け止めてもらいたいと、望むのを恐れて
日常を脅かさないようにと、近寄ることを恐れて
語らないようにしているお仕事のこととかは、聞かないように、いい子でいようとしてた。


そんな、わたしが。

永遠の氷の花永遠に続く愛の花冠を見つけることが出来るのか。


それに


私がこの世界に、残ることができたとしても。
あなたがあの世界を諦めて、いつか消えてしまおうとしているのなら。

いままだここにいるあなたが
どうか、消えてなくならないようにと。


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腕に受けた無数の刃の痛みは、まだ鮮明に覚えてる。
再び受けてもそれを恐れることのないようにと、自分に刻み付けた。

この、人には大きすぎる、裏の世界に縛り付けるような禍いものを。
それでもなお、表の世界で過ごせるくらいに……緩和させたり、地に還元させたり、別の何かの方法を……
私が勝手に動き回って、見つけ出すなんて、きっと途方もなく、難しい話。



でもね、それでも、諦めたくはないの。

勝手なことするなって、また叱られるかもしれない。
呆れたり、困った顔をさせてしまうかもしれないけど。


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腕に受けた無数の刃の痛みは、まだ鮮明に覚えてる。
でもそれを、左腕で光る腕輪が、少しだけ
癒してくれているような、そんな気がした。