RECORD
Eno.18 ハッカの記録

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ここで、みんなはなにを見るんだろう。
ここでなにかを見た人は、帰ってこられたのかな。
北摩モノレール東部区間 - 思い出の駅

思い出の駅
楽しかったあの頃の記憶が、来た者を車両へと招き入れる。
ゆうやけこやけの景色のなか。
駅に佇んで、ぼうっと、空をみあげている。
この駅は、ある特定の時間に
"暖かな思い出"が現実化する駅――らしい。
がたんごとん。がたんごとん……。
列車が、駅にやってくる。
「………」
やってくるそれは、ただの列車。
乗客の姿はなく、だれも乗り降りすることもなくて。
"暖かな思い出"が、実現化されることもなかった。
「……それなりに、楽しかったと思うんだけどなぁ」
むかしのこと。こどものころのこと。
『楽しかった』のラベルを貼ったダンボールに
ずっとしまいっぱなしにしているもの。
暖かな思い出かというと――どうだろうね。
冷え切った自分の指を、にぎにぎとして。
そうだね、それに気づいたのも、きっと最近のこと。
招き入れるには、あの頃の思い出じゃ、きっと足りない。
列車は、ただの列車のまま。
扉が閉まって、またどこかへ向けて走り出していった。
ひとり。置き去りになった、駅のホームで。
「さて」
「帰ろっか~」
ひとりきりだと、よくないほうに思考が歩いてしまいそうで。
帰ろ帰ろとつぶやきながら、立ち上がる。
『帰る』。それは、ちょんと断ち切る言葉。
でも――どこにだろうね?
ただ、今は、ゆうやけじゃない空の色を、ながめていたい気分だった。
ここで、みんなはなにを見るんだろう。
ここでなにかを見た人は、帰ってこられたのかな。



