RECORD

Eno.395 星多 萠の記録

追い風

陸上競技場のトラックを走る。走る。
でも、どれだけがむしゃらに腕と脚を動かしても進まない。
景色はただ、わたしを横切って追い抜いていく選手達を映す。

走ることが好きなだけ。
プロのアスリートを目指す気も無い。
そう割り切ろうとしても、
誰かに記録を超されることには悔しさがこみ上げる。

……わたしは、
この競技を頑張っていきたいのに、
ここで終わりなの?


「わッ」



ふと突然、背から強い風が吹いた。

わたしの体は羽根のような軽やかさと、
獣のような疾さを得て、
皆をやすやすと一気に追い抜かす。

嘘。

わたしが一番だ……!


「……って。
あれ?」



ゴールで止まりたいのに、体にブレーキが効かない!?


――――――――
――…



「……夢じゃん」



それでも、夢の中の感覚で気付く。

裏の世界でわたしに纏う何かの正体は
――“追い風”。


「ワフ!」